基節骨骨折後の変形治癒に高度拘縮を生じた1症例の治療経験
【はじめに】 指基節骨骨折は腱の癒着や骨折の変形治癒によりPIP関節の屈曲拘縮や可動域制限を生じることが多く、これらにより物体把握能力の低下等、機能的障害を残すことがある。今回、小指基節骨骨折後の変形治癒から高度の拘縮を生じた1症例に対して、手術と早期運動療法を行い良好な成績が得られたので報告する。 【症例紹介】 症例は50歳女性、平成15年12月自宅にて転倒し受傷。近医にて左小指基節骨開放性骨折の診断。創処置後保存治療を受けるも、PIP関節の高度の屈曲拘縮が残存した為他院紹介され、平成16年3月、屈筋ならびに伸筋腱剥離術を施行された。しかし、その後も症状改善せず平成16年10月当院を受診...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2005; p. 21 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2005
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
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ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2005.0.21.0 |
Cover
Summary: | 【はじめに】 指基節骨骨折は腱の癒着や骨折の変形治癒によりPIP関節の屈曲拘縮や可動域制限を生じることが多く、これらにより物体把握能力の低下等、機能的障害を残すことがある。今回、小指基節骨骨折後の変形治癒から高度の拘縮を生じた1症例に対して、手術と早期運動療法を行い良好な成績が得られたので報告する。 【症例紹介】 症例は50歳女性、平成15年12月自宅にて転倒し受傷。近医にて左小指基節骨開放性骨折の診断。創処置後保存治療を受けるも、PIP関節の高度の屈曲拘縮が残存した為他院紹介され、平成16年3月、屈筋ならびに伸筋腱剥離術を施行された。しかし、その後も症状改善せず平成16年10月当院を受診した。 【術前評価】 初診時の小指関節可動域は自・他動共、MP関節:伸展45°屈曲40°、PIP関節:伸展-75°屈曲80°、DIP関節:伸展-15°屈曲50°であった。ADL上、洗顔が困難であった。症例は女性であり、美容的観点からも指の変形に対して大きな不満を持っていた。X-P上、基節骨基部において掌側凸約40°の屈曲変形を有して完全に癒合していた。 【術前計画ならびに手術方法】 PIP関節屈曲拘縮の主な原因を基節骨の高度の背屈変形によるMP関節過伸展ならびにPIP関節伸展力低下と考えた。また2次的に生じていると考えられる伸筋腱ならびに屈筋腱の癒着、PIP関節掌側板ならびに側副靭帯の短縮、前回手術の瘢痕拘縮等を同時に処理することが必要と考えた。以上より、小指基節骨の矯正骨切り術、伸筋腱ならびに屈筋腱剥離術、PIP関節掌側関節包切離術ならびに授動術、皮膚瘢痕形成術を施行した。 【術後療法】 術翌日よりMP関節屈曲位・PIP関節伸展ブロック付き背側splint装着下での自・他動運動を開始した。再拘縮・腱癒着を防ぐ為、自動運動では伸筋のグライディングの促進、他動運動では過屈曲によるExtension lagを防止する為、PIP関節屈曲は段階的に進めた。 【結果】 術後2週目の小指自動可動域は、MP関節:伸展5°屈曲55°、PIP関節:伸展-20°屈曲70°、DIP関節:伸展-5°屈曲30°であった。術後3ヶ月では骨癒合は良好であり、MP関節:伸展10°屈曲75°、PIP関節:伸展-20°屈曲85°、DIP関節:伸展-5°屈曲50°と、可動域は良好に獲得された。日常生活動作上特に問題なく、美容面も改善され、患者の満足度は高い。 【考察】 基節骨骨折後の屈曲・回旋変形を伴う変形治癒に対する矯正骨切り術の報告がなされている。しかし、本症例のように基節骨の高度の背屈変形にPIP関節屈曲拘縮を伴った治療に対する報告はほとんどない。今回、手術と早期運動療法を行うことにより良好な成績を得ることが出来たので報告した。 |
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ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2005.0.21.0 |