成人肝移植患者における脾動脈瘤の治療経験

(はじめに)脾動脈瘤(Splenic Artery Aneurysms:以下SAA)は稀な疾患であるが、肝硬変例では7-17%に合併するとの報告があり、SAAの破裂は重大な合併症と死亡率をもたらすと報告されている。今回、成人肝移植患者における脾動脈瘤の治療例を経験したので文献的考察を含めて報告する。(方法)当院で2014年から2022年3月までに肝移植を施行した130例中、SAA5例(全例生体、3.8%)であった。SAA5例の臨床的背景、SAA所見、治療方法、経過について検討した。(結果)臨床的背景:28~68歳(中央値49)、男性1例、女性4例。背景疾患は肝硬変2例(C型1、不明1)、PBC...

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Published in移植 Vol. 57; no. Supplement; p. s388_1
Main Authors 加藤, 孝章, 小寺, 由人, 平田, 義弘, 大森, 亜紀子, 山下, 信吾, 有泉, 俊一, 片桐, 聡, 本田, 五郎, 江川, 裕人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
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Summary:(はじめに)脾動脈瘤(Splenic Artery Aneurysms:以下SAA)は稀な疾患であるが、肝硬変例では7-17%に合併するとの報告があり、SAAの破裂は重大な合併症と死亡率をもたらすと報告されている。今回、成人肝移植患者における脾動脈瘤の治療例を経験したので文献的考察を含めて報告する。(方法)当院で2014年から2022年3月までに肝移植を施行した130例中、SAA5例(全例生体、3.8%)であった。SAA5例の臨床的背景、SAA所見、治療方法、経過について検討した。(結果)臨床的背景:28~68歳(中央値49)、男性1例、女性4例。背景疾患は肝硬変2例(C型1、不明1)、PBC2例、アラジール症候群1例。MELD 10-13(中央値12)、グラフトは左葉4例、右葉1例、GRWR:0.73~0.97(中央値0.86)、ドナー続柄:夫2例、長男2例、母親1例、血液型不適合3例であった。SAAの大きさ8.0-30.9mm(中央値15)、多発4例、単発1例であった。脾動脈外の併存動脈瘤は2例に認めた。側副血行路は全例に認めた。治療方法は肝移植時に脾摘付加2例、肝移植後2年3か月にSAA増大にて脾摘1例、経過観察2例であった。経過観察例の1例は消失した。また、脾動脈外の併存動脈瘤は2例とも縮小した。動脈瘤に起因する合併症なく、全例生存中である。(結語)肝移植患者の術前後のSAAの注意深い術前評価が必要であり、SAA破裂を回避するために治療を検討する必要がある。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s388_1