小児生体肝移植におけてグラフト肝のうっ血が及ぼす影響

背景グラフト肝のうっ血領域の肝機能については未だ不明な点は多い。小児症例でグラフトサイズが小さい場合、中肝静脈を伴わない内側区域をグラフトにつけるべきか否かについては議論のあるところである。方法2006年から2021年に京都大学で施行された15歳以下の胆道閉鎖症術後の初回生体肝移植のうち、GRWR2%未満のレシピエントを対象とした。うっ血領域を含むMHV左葉グラフト15症例をうっ血あり群、MHVあり左葉グラフトと外側区域グラフト38症例をうっ血群とし術後成績を比較検討した(Study1)。次に、うっ血あり群の症例で、術前のドナーのCT画像から非うっ血領域のみのGRWRを算出した。うっ血領域を追...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s326_3
Main Authors 岡島, 英明, 政野, 裕紀, 平田, 真章, 上林, エレーナ幸江, 伊藤, 孝司, 奥村, 晋也, 小川, 絵里, 青木, 光, 波多野, 悦朗, 岡本, 竜弥
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s326_3

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Summary:背景グラフト肝のうっ血領域の肝機能については未だ不明な点は多い。小児症例でグラフトサイズが小さい場合、中肝静脈を伴わない内側区域をグラフトにつけるべきか否かについては議論のあるところである。方法2006年から2021年に京都大学で施行された15歳以下の胆道閉鎖症術後の初回生体肝移植のうち、GRWR2%未満のレシピエントを対象とした。うっ血領域を含むMHV左葉グラフト15症例をうっ血あり群、MHVあり左葉グラフトと外側区域グラフト38症例をうっ血群とし術後成績を比較検討した(Study1)。次に、うっ血あり群の症例で、術前のドナーのCT画像から非うっ血領域のみのGRWRを算出した。うっ血領域を追加した場合の影響をみるため、2群間で非うっ血領域のGRWRが同程度となるように、うっ血群の中でGRWR1.4%未満の症例18例を抽出し(うっ血Small群)、術後成績を比較検討した(Study2)。結果Study1:うっ血あり群では、うっ血群と比べ、PTの回復は有意に悪く、腹水量も有意に多かった。Study2:うっ血あり群では、うっ血Small群と比べ、術前の背景因子や非うっ血領域のGRWRが同程度あり、うっ血領域の分GRWRは平均0.32%大きいにも関わらず、PTの回復は有意に悪く、腹水量も有意に多く、入院中に投与を要したアルブミン量、γグロブリン量も有意に多かった。結語小児症例にとって、small for sizeが危惧されるような場合、GRWRを単純に大きくするためにうっ血領域を追加することは、悪影響を及ぼす可能性がある。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s326_3