ドローンによる摘出臓器搬送の可能性を見据えたシミュレーション実験
【背景】移植医療において良好な治療成績を得るためには、摘出臓器の搬送のための最適なロジスティクスを計画することが重要なプロセスの一つである。最近、北米から、ドローンにより搬送された臓器を用いた移植の成功例が報告された。ドローンを用いることで公共交通機関やチャーター便への円滑な接続による搬送時間の短縮や移動に伴う移植チームのリスク低減につながる可能性がある。一方、ドローン搬送による移植用臓器への影響についてはいまだ不明な点がある。【目的】動物モデルから摘出した臓器をドローンにより搬送し、臓器への影響を明らかにする。【方法】Wisterラット12匹(8週齢6匹、28週齢6匹)の肝臓を摘出後に2分割...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s144_1 |
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Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2022
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.57.Supplement_s144_1 |
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Summary: | 【背景】移植医療において良好な治療成績を得るためには、摘出臓器の搬送のための最適なロジスティクスを計画することが重要なプロセスの一つである。最近、北米から、ドローンにより搬送された臓器を用いた移植の成功例が報告された。ドローンを用いることで公共交通機関やチャーター便への円滑な接続による搬送時間の短縮や移動に伴う移植チームのリスク低減につながる可能性がある。一方、ドローン搬送による移植用臓器への影響についてはいまだ不明な点がある。【目的】動物モデルから摘出した臓器をドローンにより搬送し、臓器への影響を明らかにする。【方法】Wisterラット12匹(8週齢6匹、28週齢6匹)の肝臓を摘出後に2分割し、Drone群(n=12 肝重量 5.6±1.31g)とControl群(n=12 肝重量 12.0±3.14g)を設定。ドローン実験は五島列島の福江島-久賀島間(距離12km)で実施。Drone群は時速30-40kmのマルチコプター型ドローンで海上60mを飛行し搬送、Control群は船及び車で搬送。検体を長崎大学に持ち帰り、生化学的・組織学的評価を施行。【結果】保冷容器内温度は搬送方法に関わらず一定であった。冷虚血時間はDrone群902分vs. Control群 909分。肉眼的所見では色調に差はなく、両者ともに明らかな損傷は認めなかった。保存液検体中のAST(27.0vs55.18 IU/L p<0.01)、ALT(17.9vs33.0 IU/L p=0.02)、ALP(236vs443 IU/L p=0.01)はDrone群で有意に数値が低かった。組織学的検査では肝障害の程度は両群に明らかな差を認めなかった。【結語】本邦初のドローンによる移植用臓器搬送のシミュレーション実験を行った。生化学的・組織学的評価によりドローン搬送での有意な障害は無いと考えられ、今後、臨床での実施可能性も含めて検討を重ねたい。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.57.Supplement_s144_1 |