脂肪肝虚血再灌流障害におけるPARP-1阻害薬の細胞保護効果に関する基礎研究

【背景】脂肪肝は正常肝臓より虚血再灌流傷害(IRI)に弱く、類洞内皮障害や肝細胞障害が通常より顕著に現れる。したがって脂肪肝グラフト適応拡大にはこの問題を解決することが急務である。本研究ではPARPのなかでも特に肝類洞内皮細胞に強く発現するPARP-1に着目し、マウス脂肪肝虚血再灌流モデルを用いて、肝類洞内皮におけるPARP-1の役割を解明するとともに、そのブロッカーであるPj34の脂肪肝虚血再灌流障害における細胞保護効果を検討する。【方法】脂肪肝マウス 70%虚血再灌流(IRI)モデルを使用し(A群) 脂肪肝60min IRI+コントロール(n=4)と(B群)脂肪肝60min IRI+PJ3...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s346_2
Main Authors 堀口, 明彦, 荒川, 敏, 志村, 正博, 伊藤, 貴洋, 加藤, 宏之, 伊東, 昌広, 小池, 大助, 浅野, 之夫, 水野, 修吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s346_2

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Summary:【背景】脂肪肝は正常肝臓より虚血再灌流傷害(IRI)に弱く、類洞内皮障害や肝細胞障害が通常より顕著に現れる。したがって脂肪肝グラフト適応拡大にはこの問題を解決することが急務である。本研究ではPARPのなかでも特に肝類洞内皮細胞に強く発現するPARP-1に着目し、マウス脂肪肝虚血再灌流モデルを用いて、肝類洞内皮におけるPARP-1の役割を解明するとともに、そのブロッカーであるPj34の脂肪肝虚血再灌流障害における細胞保護効果を検討する。【方法】脂肪肝マウス 70%虚血再灌流(IRI)モデルを使用し(A群) 脂肪肝60min IRI+コントロール(n=4)と(B群)脂肪肝60min IRI+PJ34(20mg/Body)(n=4)を作成し肝障害の程度を比較した。【結果】A群に比べてB群でAST値が統計学的有意差をもって低値となった(6370±1944 vs. 4011±1365、p<0.05)。また両群で肝障害の程度をHE染色で比較すると、A群では中心静脈領域に著明なうっ血所見と肝細胞壊死を認め、グリソン鞘付近には高度な炎症細胞浸潤を認めた。またこれらの変化はB群(治療群)では肝壊死は軽減され、うっ血所見も有意に低下していた。【結語】PARP−1阻害薬は脂肪肝IRIにおいて細胞保護効果を有しており、脂肪肝虚血再灌流障害を軽減する一助になる可能性が示唆された。今後、炎症細胞浸潤や類洞内皮障害の程度を検索し、その保護効果のメカニズムを解明する必要があると考えられた。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s346_2