実験的肝癌成生過程におけるカタラーゼの研究
木下法にしたがい,Butter Yellow白米食で白鼠を飼育すること14週後,これらの動物を2群に分けた。1群はさらにButter Yellow白米食を与えつづけ,他の1群は正常食に切替え,2週乃至3週を経て実験に供した。 実験に際し,白鼠を出血死せしめ,その肝の病変にしたがって肉眼的正常,表面不平滑,肝硬変並に肝癌の4段階に分け,その各々の肝並に腎カクラーゼ作用をBattelli-Stern装置によう測定比較検討した。 予備実験に際し,カタラーゼ作用の至適酸度がpH8.5であることを先ず確め第1表に示した。 次に第1群の白鼠の肝並に腎カタラーゼ作用を第2表に示した。表に明らかなように肝の病...
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Published in | 癌 Vol. 43; no. 4; pp. 431 - 436 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本癌学会
1952
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Summary: | 木下法にしたがい,Butter Yellow白米食で白鼠を飼育すること14週後,これらの動物を2群に分けた。1群はさらにButter Yellow白米食を与えつづけ,他の1群は正常食に切替え,2週乃至3週を経て実験に供した。 実験に際し,白鼠を出血死せしめ,その肝の病変にしたがって肉眼的正常,表面不平滑,肝硬変並に肝癌の4段階に分け,その各々の肝並に腎カクラーゼ作用をBattelli-Stern装置によう測定比較検討した。 予備実験に際し,カタラーゼ作用の至適酸度がpH8.5であることを先ず確め第1表に示した。 次に第1群の白鼠の肝並に腎カタラーゼ作用を第2表に示した。表に明らかなように肝の病変が進行するにつれて,動物の肝カタラーゼ作用は漸減し,肝癌では0に近いかあるいは痕跡的存在を示すに過ぎなかつた。これらの成績は従来の諸研究者の報告に完全に一致している。他方腎カタラーゼ作用は肝カクラーゼの減少につれ逆に漸増している点が注目に値する。 第2群即ちButter Yellow白米食後正常食を与えた動物の肝並に肝カタラーゼ作用は,第3表にみる如く上述の結果とは異った傾向を示した。即ち肝の病変の初期では肝カタラーゼ作用はむしろ増加している。硬変を呈する肝のカタラーゼ作用も正常肝の80%程度を示している。しかし肝癌では第1群の白鼠の場合と同様に痕跡的であった。腎カタラーゼは第1群の場合ほど顕箸ではないが病変の進行につれて多くの場合正常値よりうわまわっている。 さて上述の諸結果は第1図に図示して参考とした。第1群並に第2群の動物の肝カタラーゼの差異は何に由来するのであろうか。著者等は必ずしも結論を急ぐものではないが,肝組織に含まれるButter Yellowの有無は大いに関係あるのではなかろうか,殊にMiller等の報告によるButter Yellow飼与動物の肝組織に存在する蛋白結合色素の意義は見のがすわけにはいかない。 |
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ISSN: | 0016-450X |
DOI: | 10.20772/cancersci1907.43.4_431 |