門脈狭窄・閉塞を有する肝硬変に対するレノポータル再建による肝移植
門脈狭窄・閉塞を有する肝硬変に対する肝移植の際に、脾腎シャント(SRS)のため門脈血流の確保が困難となることがある。当科では、門脈血流を確保するためレノポータル再建(RPA)を行っており、その短期・長期成績を報告する。 対象は門脈狭窄・閉塞に巨大SRSを伴う肝硬変に対して肝移植を行った15例。RPAは、SRSが発達し、術中門脈圧モニタリングでシャントを圧迫しても門脈圧上昇を認めない場合や門脈本幹の血流が十分でないと予想される場合などに施行した。術中判断により生理学的再建を行えた症例を対照とし、全生存率、周術期因子、術後経過を比較した。RPA群の一部でレノグラムにより分腎機能を評価した。 RPA...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s318_3 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2022
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.57.Supplement_s318_3 |
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Summary: | 門脈狭窄・閉塞を有する肝硬変に対する肝移植の際に、脾腎シャント(SRS)のため門脈血流の確保が困難となることがある。当科では、門脈血流を確保するためレノポータル再建(RPA)を行っており、その短期・長期成績を報告する。 対象は門脈狭窄・閉塞に巨大SRSを伴う肝硬変に対して肝移植を行った15例。RPAは、SRSが発達し、術中門脈圧モニタリングでシャントを圧迫しても門脈圧上昇を認めない場合や門脈本幹の血流が十分でないと予想される場合などに施行した。術中判断により生理学的再建を行えた症例を対照とし、全生存率、周術期因子、術後経過を比較した。RPA群の一部でレノグラムにより分腎機能を評価した。 RPA群9例(生体8例/脳死1例)、対照群6例(生体5例/脳死1例)。両群で5年生存率(RPA 群:88.9%、対照群:83.3%, p=0.85) に差はなかった。RPA 群では、主に右葉グラフトが使用され (77.8%)、手術時間は延長する傾向にあった(RPA 群:891±148、対照群:736±138分, p=0.062)が、出血量に差はなかった。術後血管・胆管合併症は両群とも約20-30%に認められ、RPA群の遠隔期(術後8年目)に左腎静脈血栓を合併し抗凝固療法にて治療した症例を1例経験した。また、RPA群ではCMV antigenemiaの頻度が低い傾向にあった(p=0.073)。クレアチニン値はRPA群で術後一過性上昇を認めたが、以後は改善し対照群と差を認めなかった。レノグラムでは、遠隔期で左腎の有効腎血漿流量は右腎の約71%であった。 レノポータル再建は、巨大SRSを有する門脈狭窄・閉塞の肝硬変に対して有効な再建法である。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.57.Supplement_s318_3 |