ブタ膵島異種移植を実現するための取り組み:長期培養下ブタ膵島の特性の検証

ブタ膵島を要請に応じていつでも必要数提供できるシステムの構築は、将来の膵島移植の推進に大いに貢献するものと考えられる。本研究では、長期培養することでブタ膵島に認められる特性の変化を明らかにし、培養膵島が糖尿病動物への移植に利用できるかを検証した。マイクロミニブタより膵島を回収し、24℃もしくは37℃で28日間静置培養した。結果、37℃培養により膵島の形態は安定化し、膵島細胞の表面のインテグリンβ1の発現増強が認められた。また、37℃培養で膵島の径は増加する傾向にあり、膵島中のKi67陽性細胞は、β細胞、非β細胞ともに増加した。加えて、膵島発生や内分泌ホルモンをコードする遺伝子(Pdx1, Ne...

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Published in移植 Vol. 58; no. Supplement; p. s203_1
Main Authors 坂田, 直昭, 川上, 亮, 吉松, 軍平, 小玉, 正太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
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Summary:ブタ膵島を要請に応じていつでも必要数提供できるシステムの構築は、将来の膵島移植の推進に大いに貢献するものと考えられる。本研究では、長期培養することでブタ膵島に認められる特性の変化を明らかにし、培養膵島が糖尿病動物への移植に利用できるかを検証した。マイクロミニブタより膵島を回収し、24℃もしくは37℃で28日間静置培養した。結果、37℃培養により膵島の形態は安定化し、膵島細胞の表面のインテグリンβ1の発現増強が認められた。また、37℃培養で膵島の径は増加する傾向にあり、膵島中のKi67陽性細胞は、β細胞、非β細胞ともに増加した。加えて、膵島発生や内分泌ホルモンをコードする遺伝子(Pdx1, Neurog3, Ins, Gcg, Sst)の発現増強やグルコース応答性インスリン分泌の改善が37℃培養膵島で確認された。ブタ膵島中には多分化能を有する細胞分画が存在し、膵星細胞と推測された。37℃培養で膵島中のCD146陽性膵星細胞が増殖し、その一部はPDX1陽性であった。最後に糖尿病マウス(ヌードマウス)への膵島移植を行ったが、37℃28日で培養した膵島は1日培養の膵島と同様の移植効率を示した。37℃で長期培養されたブタ膵島には接着因子誘導による形態の安定化、膵島再生に伴う細胞増殖、インスリン分泌機能の回復が認められた。また、糖尿病動物への移植にこれを利用することもできた。長期培養膵島のこの様な特性は、膵星細胞の関与によるものと推測された。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s203_1