(RA)手指伸筋腱皮下断裂の機能予後
【はじめに】 関節リウマチ(以下RA)に伴う手指伸筋腱皮下断裂は比較的多くみられる。治療手技として、外科的に腱移行、腱移植のいずれかが選択される。今回、腱移行術を施行した3症例を経験し、術前術後の機能予後について比較・検討したので報告する。 【症例】 女性。年齢41から55(平均49)歳。RAのclassIからII、stageIIからIII(周囲関節)。尚、全症例ともに利き手側の障害で、zone VIIでの断裂であった。追跡調査期間は3ヶ月から2年10ヶ月。 症例1:主婦。右IV、V指断裂。固有示指伸筋腱へ腱移行+kapandji法追加。 症例2:主婦。右第III、IV、V指断裂。III、...
Saved in:
Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2004; p. 86 |
---|---|
Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2004
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2004.0.86.0 |
Cover
Summary: | 【はじめに】 関節リウマチ(以下RA)に伴う手指伸筋腱皮下断裂は比較的多くみられる。治療手技として、外科的に腱移行、腱移植のいずれかが選択される。今回、腱移行術を施行した3症例を経験し、術前術後の機能予後について比較・検討したので報告する。 【症例】 女性。年齢41から55(平均49)歳。RAのclassIからII、stageIIからIII(周囲関節)。尚、全症例ともに利き手側の障害で、zone VIIでの断裂であった。追跡調査期間は3ヶ月から2年10ヶ月。 症例1:主婦。右IV、V指断裂。固有示指伸筋腱へ腱移行+kapandji法追加。 症例2:主婦。右第III、IV、V指断裂。III、IV指伸筋腱をII指伸筋腱へ腱移行、V指伸筋腱を固有小指伸筋へ腱移行+kapandji法追加。 症例3:主婦、農業。右第IV、V指断裂。IV、V指伸筋腱をIII指伸筋腱へ腱移行+橈骨手根関節固定術。 【術後プログラム】 術後3週よりテーピング使用による自動ROM、術後6週より他動ROM及び抵抗運動を徐々にし、術後8週よりpower graspを開始した。 【方法】 調査内容は1)MP関節伸展の自動ROM、2)伸展不全、3)日本手の外科学会の指伸筋腱機能評価の% total active motion(以下%TAM)、4)握力(水銀握力計)、5)ADL(日本手の外科学会ADL検査)術前術後の調査を行った。 【結果】 1)術前術後のMP伸展のROM(術前→術後) 症例1はIV指-35°→5°V指-5°→5°症例2はIII指-70°→-35°IV指-65°→-35°V指0°→-15°症例3はIV指-70°→-10°V指-40°→0° 平均IV指-56°→-13°V指-15°→-3° 2)術前術後の伸展不全(術前→術後):症例1はIV指55°→20°V指30°→20°症例2はIII指90°→35°IV指90°→35°V指10°→15°症例3は、IV指90°→30°V指55°→20°平均IV指78°→28°V指31°→18° 3)%TAM:症例1は可から良へ、症例2は術前可であったが、術後大きな変化は見られず、症例3は可から良へ変化が見られた。 4)握力(水銀握力計、単位mmHg、術前→術後):症例1は、94→210、症例2は80→60、症例3は75→140 平均:83→137 5)ADL:術前のADL障害は、タオル絞り、蛇口の開閉、書字、爪切り、箸使用、化粧であった。術後症例1、3は改善されていたが、症例2は書字が若干可能になった以外は不能であった。蛇口の開閉に関しては、3例ともにレバー式に改造していた。 【考察】 手指伸筋腱断裂は、吉津によると、伸筋に比べ屈筋の力が強いため伸筋腱の癒着は剥離されやすく、多少の可動域制限は手関節の位置で矯正できる。今回3週の外固定期間をおいて、手指の自動ROMを行い、術後6週で他動ROM及び抵抗運動を徐々に行い、術後8週よりpower graspを開始した。 橋本らは、中環小指MP関節自動可動域を検討し、ギプス固定群と早期運動療法群との比較で、後者が有意に良好な可動域が得られたと述べている。これと比較すると、早期運動療法群と同等な結果が得られた。術前術後のMP関節伸展の自動ROM、伸展不全は、術後の経過観察期間が長いほど結果は良好であった。%TAMから見ても、症例1、3については可から良へ改善しており、手指の機能は改善しているといえる。しかし、症例2は術前よりは改善したものの可であった。これは手指・手関節伸筋、屈筋群の筋力低下、術後の経過観察期間が短期であることが原因と考えられる。握力については、今野らによると、ADL自立となる握力の境界線は100mmHgであると述べている。今回、症例1、3はこの境より上であったが、症例2は60mmHgであった。これは、手指・手関節伸筋、屈筋群の筋力低下、術後の経過観察期間が短期であることが原因と考えられる。ADL上の問題については、術前に支障を感じていたタオル絞り、蛇口の開閉、書字、爪切り、箸使用は症例1、3は術後改善した。症例2は書字が若干可能になったが、他の項目は不能であった。これは、握力が自立となる境界線より下であること、手指・手関節伸筋、屈筋群の筋力低下、術後の経過観察期間が短期であることが考えられる。しかし、蛇口の開閉に関しては、3例ともレバー式に改造しており問題はなかった。cosmeticな観点として下垂指が機能指に改善され、外見的にも満足が得られた。 以上のことより手指の機能は改善しているが、ADL上支障をきたす部分がある。これはRAによる関節破壊、変形、筋力低下などによる部分が大きく、今後長期間のフォローアップが必要不可欠ではないかと考える。 |
---|---|
ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2004.0.86.0 |