移植患者への免疫抑制薬の投与法の実際と課題

腎移植における免疫抑制療法は、施設ごと、症例ごとで様々である。添付文書上は、FKは移植2日前より、CsAは移植1日前より内服となっているが、この通りとしている施設は極めて少ない。移植医は、保険請求の際の症状詳記を症例ごとに記載する必要がある。EVRも添付文章上はCNIおよびステロイドの併用が義務付けられている。当院ではEVRの創傷治癒遅延の副作用を考慮して、腎移植術後10日目ころからEVRを開始し、MMF、CNIを減量してmPSLを2-3か月を目標に中止とするレジメで免疫抑制を行っている。腎移植後の少量のステロイドの使用は心血管イベント、感染症のリスクを増加させることが報告されており、長期生命...

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Published in移植 Vol. 57; no. Supplement; p. s175_1
Main Authors 香野, 日高, 環, 聡, 坂巻, 裕介, 中川, 健
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
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Summary:腎移植における免疫抑制療法は、施設ごと、症例ごとで様々である。添付文書上は、FKは移植2日前より、CsAは移植1日前より内服となっているが、この通りとしている施設は極めて少ない。移植医は、保険請求の際の症状詳記を症例ごとに記載する必要がある。EVRも添付文章上はCNIおよびステロイドの併用が義務付けられている。当院ではEVRの創傷治癒遅延の副作用を考慮して、腎移植術後10日目ころからEVRを開始し、MMF、CNIを減量してmPSLを2-3か月を目標に中止とするレジメで免疫抑制を行っている。腎移植後の少量のステロイドの使用は心血管イベント、感染症のリスクを増加させることが報告されており、長期生命予後を向上させるためにステロイドは可能な限り中止が望ましいと考えている。当院では、約90%の症例でステロイドを終了できており、腎移植後1年以内の移植後新規糖尿病、ステロイド白内障、大腿骨頭壊死の症例は認めていない。しかしなかにはステロイド継続が必要である症例もあり、症例ごとに対応している。CNI、EVRに関しては、添付文書上はトラフ値での投与量調節がすすめられている。外来ではCNIはトラフ値にてフォローしているが、C0、C2、C4、を生検入院時に確認している。移植医は免疫抑制剤と相互作用のある薬剤や、症例ごとの薬剤至適血中濃度等を十分に把握しておく必要があり、免疫抑制療法が適切かどうか、細心の注意を払って患者と接している。本邦における移植患者への免疫抑制剤の投与法の実際と課題について講演する。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s175_1