当院におけるミトコンドリア病に対する肝移植経験
【はじめに】ミトコンドリア病は,ミトコンドリア機能異常に伴う様々な臓器機能不全を呈する病態の総称である.ミトコンドリア肝症に対する肝移植は,移植前に中枢神経症状を認める症例では予後不良だが,移植前の確定診断が困難な場合も多い.当院で経験したミトコンドリア肝症に対する肝移植3例を提示する.【症例】症例1は8ヵ月男児.原因不明肝硬変にて生体肝移植術を施行.その後神経症状の増悪を認め,MPV17関連ミトコンドリアDNA枯渇症候群と診断.現在も生存中.症例2は6歳男児.2歳時にMPV17関連ミトコンドリアDNA枯渇症候群と診断.4歳時に肝芽腫に対して肝後区域切除を施行.6歳時に肝芽腫の肝内再発を疑い生...
Saved in:
Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s321_2 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s321_2 |
Cover
Summary: | 【はじめに】ミトコンドリア病は,ミトコンドリア機能異常に伴う様々な臓器機能不全を呈する病態の総称である.ミトコンドリア肝症に対する肝移植は,移植前に中枢神経症状を認める症例では予後不良だが,移植前の確定診断が困難な場合も多い.当院で経験したミトコンドリア肝症に対する肝移植3例を提示する.【症例】症例1は8ヵ月男児.原因不明肝硬変にて生体肝移植術を施行.その後神経症状の増悪を認め,MPV17関連ミトコンドリアDNA枯渇症候群と診断.現在も生存中.症例2は6歳男児.2歳時にMPV17関連ミトコンドリアDNA枯渇症候群と診断.4歳時に肝芽腫に対して肝後区域切除を施行.6歳時に肝芽腫の肝内再発を疑い生体肝移植術を施行したが,後に肝細胞癌と判明.右心不全にて術後83日目に死亡.症例3は3カ月男児.神経症状を認めない急性肝不全にて生体肝移植術を施行.その後POLG関連Myocerebrohepatopathy spectrum(MCHS)と診断.移植後4年のフォローでは神経症状の出現はなく,比較的良好な成長発達を認めている.【考察】ミトコンドリア肝症の肝移植後の神経学的及び生命予後は良好とは言えないのが現状である.一方MCHS症例への肝移植の報告はこれまでに無く,特に神経症状を認めない乳児期急性発症のミトコンドリア肝症に対する肝移植の妥当性については,変異遺伝子を含めたさらなる検討が必要である. |
---|---|
ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s321_2 |