高齢者の顎顔面形態と歯列咬合形態の実態調査
本研究の目的は、多数歯の残存する高齢者を対象として、その歯列咬合状態と顎顔面形態を評価することである。研究対象は、年齢が70歳以上で、第3大臼歯を除く現在歯数が20本以上であり、かつ上下顎6前歯がすべて存在し、現在歯により咬合高径が保たれていた23名(男性16名、女性7名)である。これら対象者に対して、口腔内診査を行い、さらに側面頭部X線規格写真と歯列模型の資料を採得した。対象者の平均年齢は76.0歳で、平均歯数は24.3本であった。Overbiteの平均は2.4mm、over jetの平均は3.4mmであり、上顎前突と過蓋咬合を男性各2名(8.7%)に、反対咬合を女性1名(4.3%)に認めた...
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Published in | 北海道矯正歯科学会雑誌 Vol. 29; no. 1; pp. 37 - 45 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
北海道矯正歯科学会
2001
Hokkaido Orthodontic Society |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0916-202X 2432-6747 |
DOI | 10.20760/dokyo.29.1_37 |
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Summary: | 本研究の目的は、多数歯の残存する高齢者を対象として、その歯列咬合状態と顎顔面形態を評価することである。研究対象は、年齢が70歳以上で、第3大臼歯を除く現在歯数が20本以上であり、かつ上下顎6前歯がすべて存在し、現在歯により咬合高径が保たれていた23名(男性16名、女性7名)である。これら対象者に対して、口腔内診査を行い、さらに側面頭部X線規格写真と歯列模型の資料を採得した。対象者の平均年齢は76.0歳で、平均歯数は24.3本であった。Overbiteの平均は2.4mm、over jetの平均は3.4mmであり、上顎前突と過蓋咬合を男性各2名(8.7%)に、反対咬合を女性1名(4.3%)に認めたが、切端咬合、開咬および交叉咬合の者はみられなかった。また、前歯部叢生については下顎のみに認めた者が5名、上下顎ともに認めた者が4名であり(計39.1%)、空隙歯列は上顎のみに認めた者が2名、下顎のみに認めた者が1名であった(計13.0%)。さらに、犬歯関係および大臼歯関係はI級、次いでII級の順に多く、III級を示す者はみられなかった。一方、側面頭部X線規格写真分析では、男女とも上下顎の前後的関係は下顎の後方位によるII級の傾向を示す者が多かった。また歯軸傾斜は、男性では上顎前歯の舌側傾斜の傾向が、女性では下顎前歯の唇側傾斜が認められた。以上より、今回調査を行った対象では骨格的にはII級傾向を示す者が多いものの、dental compensationにより、正常なoverbite、overjetが保たれ、良好な咬合が維持されていると考えられた。 |
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ISSN: | 0916-202X 2432-6747 |
DOI: | 10.20760/dokyo.29.1_37 |