脳死小腸移植後の高EBV血症に対してリツキシマブでの治療を行った一例

【緒言】移植後リンパ球増殖性疾患(Post-transplant lymphoproliferative disorder, PTLD)はEBVの初感染、再活性化を背景とした移植関連合併症で小腸移植後に特に多いとされる。近年腸管不全の内科的治療が向上し小腸移植後の長期予後が期待され、PTLDの重要性が増すと思われる。今回脳死小腸移植後に高EBV血症を呈しリツキシマブ投与で治療を行った症例を経験したため文献的考察を含め報告する。【症例】症例は19歳女性、腸管神経節細胞僅少症を原疾患に脳死小腸移植を施行した。サイモグロブリンで免疫抑制を導入、タクロリムス、ステロイド、エベロリムスで維持し明らかな拒...

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Published in移植 Vol. 57; no. Supplement; p. s332_2
Main Authors 城崎, 浩司, 山田, 洋平, 前田, 悠太郎, 山岸, 德子, 工藤, 裕実, 金森, 洋樹, 高橋, 信博, 加藤, 源俊, 長谷川, 康, 松原, 健太郎, 岡林, 剛史, 尾原, 秀明, 黒田, 達夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
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Summary:【緒言】移植後リンパ球増殖性疾患(Post-transplant lymphoproliferative disorder, PTLD)はEBVの初感染、再活性化を背景とした移植関連合併症で小腸移植後に特に多いとされる。近年腸管不全の内科的治療が向上し小腸移植後の長期予後が期待され、PTLDの重要性が増すと思われる。今回脳死小腸移植後に高EBV血症を呈しリツキシマブ投与で治療を行った症例を経験したため文献的考察を含め報告する。【症例】症例は19歳女性、腸管神経節細胞僅少症を原疾患に脳死小腸移植を施行した。サイモグロブリンで免疫抑制を導入、タクロリムス、ステロイド、エベロリムスで維持し明らかな拒絶なく経過している。術後1か月より血中EBVコピー数が増加し、52日目に20000まで上昇した。明らかな感染徴候はなく画像検査で腫瘤は認めなかったが、急激なコピー数増加からPTLDへの移行を懸念し53日目にリツキシマブを投与し数値は200まで改善した。現在術後3ヶ月を経過し、トラフ値7 ng/mL前後のタクロリムス、0.2 mg/kgのステロイドで免疫抑制を維持している。【考察】複数の単施設報告では小腸移植後PTLDの頻度は13-17%、死亡率は16%と報告され、早期発見および介入の重要性が述べられている。治療は免疫抑制剤の減量であるが小腸移植後では拒絶反応が同時に発生することもあり過度な減量は危険である。無症候性の症例や高い再発率が報告されており本症例では引き続き慎重な経過観察を要すると考えている。 
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s332_2