肺移植後にタクロリムスが原因と考えられる痙攣を起こした一例

【はじめに】タクロリムスは免疫抑制剤の一種であり、肺を含む移植後の拒絶反応抑制や自己免疫疾患の治療にも使用されている。副作用としては易感染性や腎機能障害、手指の振戦、高血糖、高血圧などがあるが、加えて中枢神経障害を生じることが知られている。今回、肺移植後にタクロリムスが原因と考えられる痙攣を発症した症例を経験したため報告する。【症例】57歳男性、特発性肺線維症に対して脳死左片肺移植を施行した。術後3日目から全身性の痙攣を複数回認めた。鎮静にて症状は改善するも、鎮静を浅くすると症状が再燃し、薬剤誘発性の痙攣発作を考えた。髄液穿刺を含む検査所見から感染による脳症は否定的であった。術後であり、様々な...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s341_1
Main Authors 町野, 隆介, 松本, 桂太郎, 朝重, 耕一, 溝口, 聡, 土谷, 智史, 市川, 宏美, 土肥, 良一郎, 永安, 武
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s341_1

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Summary:【はじめに】タクロリムスは免疫抑制剤の一種であり、肺を含む移植後の拒絶反応抑制や自己免疫疾患の治療にも使用されている。副作用としては易感染性や腎機能障害、手指の振戦、高血糖、高血圧などがあるが、加えて中枢神経障害を生じることが知られている。今回、肺移植後にタクロリムスが原因と考えられる痙攣を発症した症例を経験したため報告する。【症例】57歳男性、特発性肺線維症に対して脳死左片肺移植を施行した。術後3日目から全身性の痙攣を複数回認めた。鎮静にて症状は改善するも、鎮静を浅くすると症状が再燃し、薬剤誘発性の痙攣発作を考えた。髄液穿刺を含む検査所見から感染による脳症は否定的であった。術後であり、様々な薬剤が投与されていたが、原因としてはタクロリムスを第一に考慮し、シクロスポリンへの切り替えをおこなった。血中濃度のモニタリングでタクロリムスの濃度が十分低下した後は痙攣の再燃は認めず経過した。シクロスポリンへ切り替え後、2度の急性拒絶を発症したが、ステロイドパルスにて軽快し、自宅退院となった。【結語】タクロリムスは臓器移植の分野では多用される優れた免疫抑制剤であるが、その副作用として痙攣を発症し、シクロスポリンへの切り替えを契機に肺移植後急性期の免疫抑制に大きな影響を与えた症例を経験したので報告する。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s341_1