推定治癒率を用いた癌治療後の腎臓移植成績
臓器移植後の免疫抑制剤は癌の発生率を高めるが、治癒した癌の再発リスクを高めるかどうかは不明であり、癌治療後待機の基準については一定の見解がない。今回、移植時の推定治癒率を用いて癌再発リスクの評価を行った。2007年1月から2021年12月までに東京女子医科大学で行われた2905例の腎移植のうち、移植前に癌治療歴があったのは141例であった。癌の種類、病期、癌治療から移植までの待機期間、癌の再発について調査した。国立がん研究センターが公表している癌登録データを用いて、各レシピエントの癌種とステージについて、診断時、移植時における5年後の癌特異的生存率を算出した。推定癌特異的生存率は以下の式で算出...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s259_2 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s259_2 |
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Summary: | 臓器移植後の免疫抑制剤は癌の発生率を高めるが、治癒した癌の再発リスクを高めるかどうかは不明であり、癌治療後待機の基準については一定の見解がない。今回、移植時の推定治癒率を用いて癌再発リスクの評価を行った。2007年1月から2021年12月までに東京女子医科大学で行われた2905例の腎移植のうち、移植前に癌治療歴があったのは141例であった。癌の種類、病期、癌治療から移植までの待機期間、癌の再発について調査した。国立がん研究センターが公表している癌登録データを用いて、各レシピエントの癌種とステージについて、診断時、移植時における5年後の癌特異的生存率を算出した。推定癌特異的生存率は以下の式で算出した: [ある時点の癌特異的生存率] / [診断から5年後の癌特異的生存率]。移植前の待機期間の中央値は60ヶ月[29-130]、移植後のフォローアップ期間は56ヶ月[105.25-25.25]であった。生存率は癌既往の有無に関わらず有意差はなかった。癌再発は1例であった(腎細胞癌、ステージI、待機期間3ヶ月、移植後2年目に再発、患者は移植後5年生存)。推定癌治癒率は、診断時(95.08±1.09、p=0.0001、pared t-test)に比べ移植時(99.63±1.09)が有意に高く、術前待機時間に対する評価が適切であることが示された。推定癌治癒率は公開データから簡単に算出でき、適切な待機時間の判断に役立つと考えられる。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s259_2 |