重症急性膵炎合併急性肝不全に対し脳死肝移植を施行するも止血困難に陥り失った一例

【背景】不可逆となった急性肝不全は肝移植が唯一の救命手段となる.重症急性膵炎の合併と過大グラフトにより手術が難渋し失った症例を提示する.【症例】25歳女性,自己免疫性肝炎による急性肝不全で当院への転院後2日目に膵酵素上昇あり,造影CTで重症急性膵炎と診断.画像上,膵炎所見は経時的に増悪しwalled-off necrosis (WON)の可能性ありとされた.高熱が続いたが解熱傾向となり炎症反応も改善がみられ活動性感染はないと判断し脳死肝移植を施行した.腹腔内は発赤調の腹膜や腸管浮腫,膵周囲に壊死組織を認め重度の活動性炎症の残存が示唆された.Put-in前までに10000mlを超えて出血した.さ...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s323_2
Main Authors 蛭川, 和也, 冨田, 真裕, 菅原, 寧彦, 櫻井, 悠人, 磯野, 香織, 本田, 正樹, 日比, 泰造, 嶋田, 圭太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s323_2

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Summary:【背景】不可逆となった急性肝不全は肝移植が唯一の救命手段となる.重症急性膵炎の合併と過大グラフトにより手術が難渋し失った症例を提示する.【症例】25歳女性,自己免疫性肝炎による急性肝不全で当院への転院後2日目に膵酵素上昇あり,造影CTで重症急性膵炎と診断.画像上,膵炎所見は経時的に増悪しwalled-off necrosis (WON)の可能性ありとされた.高熱が続いたが解熱傾向となり炎症反応も改善がみられ活動性感染はないと判断し脳死肝移植を施行した.腹腔内は発赤調の腹膜や腸管浮腫,膵周囲に壊死組織を認め重度の活動性炎症の残存が示唆された.Put-in前までに10000mlを超えて出血した.さらに過大グラフト(グラフト重量: 1810g、GRWR: 2.21%)によりグラフト肝が腹腔内に納まらず血管再建に難渋し,冷阻血時間:10時間13分,温阻血時間:1時間45分を要した.再灌流後も止血困難で血小板数<1万/μLが持続,ガーゼパッキングで手術終了した.出血量は99739ml.その後も出血は制御できず術後2日目に失った.剖検では膵周囲のWONを認め,炎症が横行結腸,脾,左腎,胃・十二指腸,小腸,膀胱まで広範に進展していた.【まとめ】重症急性膵炎を合併したハイリスク症例の脳死肝移植中にグラフトのサイズミスマッチに遭遇し,我々は命のリレーを繋げなかった.耐術能・併存疾患などの患者因子,グラフト因子,さらに肝移植外科医の技量・経験を踏まえた術前準備が不可欠である.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s323_2