腸管不全に対する腸管リハビリテーションの現状

我々は、患者のQOLの改善を目指した腸管リハビリテーションを実践している。しかし静脈栄養(PN)が離脱できる症例は限定的である。【目的・方法】腸管不全患者において外科的介入の効果、短腸症に対するGLP-2アナログ製剤(GLP-2)の効果をPN依存において検討した。【結果】外科的治療の適応となった患者は、トランジション症例を含む10例で、短腸症5例(3~38歳)、CIPO5例(7~28歳)であった。短腸症ではSTEP治療および腸管延長術が選択され術後排便回数が減少した。CIPOでは腸瘻再造設・胃瘻造設術などが選択され、術後嘔吐や腹部膨満の回数が減少した。短腸症では5例中2例でPNを減量できたが、...

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Published in移植 Vol. 58; no. Supplement; p. s163_2
Main Authors 田附, 裕子, 木村, 武司, 上野, 豪久, 森田, 隆介, 長井, 直子, 松尾, 怜奈, 阿部, 薫, 北村, 真世, 田中, 美和, 奥山, 宏臣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
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Summary:我々は、患者のQOLの改善を目指した腸管リハビリテーションを実践している。しかし静脈栄養(PN)が離脱できる症例は限定的である。【目的・方法】腸管不全患者において外科的介入の効果、短腸症に対するGLP-2アナログ製剤(GLP-2)の効果をPN依存において検討した。【結果】外科的治療の適応となった患者は、トランジション症例を含む10例で、短腸症5例(3~38歳)、CIPO5例(7~28歳)であった。短腸症ではSTEP治療および腸管延長術が選択され術後排便回数が減少した。CIPOでは腸瘻再造設・胃瘻造設術などが選択され、術後嘔吐や腹部膨満の回数が減少した。短腸症では5例中2例でPNを減量できたが、CIPOでは術後も腹痛を有する症例がありPNの減量は困難であった。一方、短腸症11例(成人3例、小児8例)に対してGLP-2を導入し、全例で便回数の減少(-1~3回/日)および便性の改善を認め、全例で尿量の増加を認めた。投与開始後1年で、成人2例で輸液の減量が可能であり、うち1例はPNを離脱した。小児ではPN減量が2名で可能であったがPNの離脱はない。【結語】腸管不全患者に対する腸管リハビリテーションにおいて、外科的治療のみでのPN離脱は困難であった。一方、GLP-2製剤により短腸症1例でPN離脱を得たが、他はPN継続中である。現在、PN継続中の患者においてもQOLは安定しているが、長期PNの合併症も懸念され、小腸移植の適応およびその治療成績の向上が期待される。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s163_2