日本産ニセフクロセンチュウのリボソームITS 遺伝子の変異性とミトコンドリアCOI 遺伝子に基づく繁殖型の分子系統解析

ニセフクロセンチュウは世界中で様々な作物に被害を及ぼす。本種は両性生殖が一般的だが、被害の報告がない単為生殖型の分布が日本で知られるため、両型の関係や病原性についての研究が必要である。本研究は、リボソームのITS 領域とミトコンドリアのCOI領域の配列を用いて本種の両型を明らかにして関係性を調べるとともに、病原性に関する基礎的情報を得ることを目的とする。一個体由来の長鎖および短鎖rDNA ITS領域をPCR増幅して配列を分析したところ、個体内でも長鎖ITS配列は短鎖より著しく多様だった。ITS領域を用いた分子系統解析では、両型の2つの長鎖ITS 配列以外では、長鎖および短鎖ITS配列のクレード...

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Published in日本線虫学会誌 Vol. 51; no. 2; pp. 21 - 28
Main Authors 吉賀, 豊司, 中江, 和紀
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本線虫学会 20.12.2021
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ISSN0919-6765
1882-3408
DOI10.3725/jjn.51.21

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Summary:ニセフクロセンチュウは世界中で様々な作物に被害を及ぼす。本種は両性生殖が一般的だが、被害の報告がない単為生殖型の分布が日本で知られるため、両型の関係や病原性についての研究が必要である。本研究は、リボソームのITS 領域とミトコンドリアのCOI領域の配列を用いて本種の両型を明らかにして関係性を調べるとともに、病原性に関する基礎的情報を得ることを目的とする。一個体由来の長鎖および短鎖rDNA ITS領域をPCR増幅して配列を分析したところ、個体内でも長鎖ITS配列は短鎖より著しく多様だった。ITS領域を用いた分子系統解析では、両型の2つの長鎖ITS 配列以外では、長鎖および短鎖ITS配列のクレード内でそれぞれの生殖型はクラスターを形成した。その長鎖2配列は短鎖ITSとクラスターを形成し、長鎖と短鎖の中間体と考えられた。mtDNA COI遺伝子の解析によって、本邦産のニセフクロセンチュウの生殖型は種内変異であると示唆された。
ISSN:0919-6765
1882-3408
DOI:10.3725/jjn.51.21