献腎移植後の尿路トラブルに関する検討

【緒言】本邦における献腎移植の平均待機年数は約15年と言われている。小児症例を除いては長期間の透析を経た患者であり、萎縮膀胱のため膀胱尿管新吻合ができず尿管尿管吻合となる症例も多い。腎移植後も膀胱コンプライアンスの改善には時間を要し、尿路トラブルは多いとされている。当院で献腎移植後に発症した尿路トラブルについて検討を行った。【対象と方法】2006年から2023年までに当院で施行された献腎移植34例の中で小児移植5例を除いた29例について検討を行った。透析期間、自尿の有無、尿路再建方といった患者背景と尿瘻の有無、尿路感染の有無などの尿路トラブルについいて検討を行った。【結果】平均透析期間は18....

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Published in移植 Vol. 58; no. Supplement; p. s330_2
Main Authors 高本, 大路, 下木原, 航太, 花井, 孝宏, 望月, 拓, 石田, 寛明, 寺西, 淳一, 上村, 博司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
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Summary:【緒言】本邦における献腎移植の平均待機年数は約15年と言われている。小児症例を除いては長期間の透析を経た患者であり、萎縮膀胱のため膀胱尿管新吻合ができず尿管尿管吻合となる症例も多い。腎移植後も膀胱コンプライアンスの改善には時間を要し、尿路トラブルは多いとされている。当院で献腎移植後に発症した尿路トラブルについて検討を行った。【対象と方法】2006年から2023年までに当院で施行された献腎移植34例の中で小児移植5例を除いた29例について検討を行った。透析期間、自尿の有無、尿路再建方といった患者背景と尿瘻の有無、尿路感染の有無などの尿路トラブルについいて検討を行った。【結果】平均透析期間は18.6年、尿路再建方法として膀胱尿管吻合は23例、尿管尿管吻合は6例であった。尿路トラブルとして尿瘻は5例(17%)で認め、尿路感染は11例(38%)で認めた。膀胱尿管吻合例では10/23例(43%)であったのに対し尿管尿管吻合例では3/6例(50%)で尿路トラブルを認めた。【考察】腎移植後の尿路感染症は5-20%程度とされている。移植後3年以内で約半数が起こすとされる代表的な合併症である。一方、尿瘻は5%以下とされ、比較的稀な合併症である。本検討では献腎移植の約4割で何らかの尿路トラブルをきたした。膀胱萎縮も強く吻合方法に迷う症例も多いが、吻合方法においてトラブルの発生率に差は認めなかった。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s330_2