臓器移植における倫理的ジレンマを題材にした中学校・高等学校の教材開発

近年、教育現場では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて授業改善が求められている。知識伝達型の授業の後には、社会における課題を把握し、その解決に向けて自分の考えをまとめ、他者の考えを理解し、そのうえで選択・判断する力、さらに自分の考えの言語化できる力を育む必要がある。それには倫理的ジレンマ教材が適している。臓器移植は倫理的諸問題をはらみ、価値的判断が分かれ葛藤が生じるため、倫理的ジレンマ教材の題材となる。「匿名の原則」をテーマにして中学生に倫理的ジレンマの授業を実践したところ、主体的・対話的で深い学びがフィードバックとして現れた。倫理的ジレンマ教材の有効性を見出し、さらなる教材開発を目指す...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s252_1
Main Authors 朝居, 朋子, 佐藤, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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Summary:近年、教育現場では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて授業改善が求められている。知識伝達型の授業の後には、社会における課題を把握し、その解決に向けて自分の考えをまとめ、他者の考えを理解し、そのうえで選択・判断する力、さらに自分の考えの言語化できる力を育む必要がある。それには倫理的ジレンマ教材が適している。臓器移植は倫理的諸問題をはらみ、価値的判断が分かれ葛藤が生じるため、倫理的ジレンマ教材の題材となる。「匿名の原則」をテーマにして中学生に倫理的ジレンマの授業を実践したところ、主体的・対話的で深い学びがフィードバックとして現れた。倫理的ジレンマ教材の有効性を見出し、さらなる教材開発を目指すことにした。「募金と渡航移植」、「Happy-Happy(Win-Win)理論(臓器売買)」、「オプトアウトへの制度変換」、「親族優先提供」を題材に50分の授業案を作成した。テーマ、具体的な倫理的ジレンマ、授業の狙い、授業実践における留意点と解説、授業の展開、資料を共通項目とした。倫理的ジレンマを生徒に考えさせる際、いかに当事者の立場で考えさせるか、すなわち、自分にも家族にも起こりえることとして考えさせることが重要である。教材はそのことを意識して作成し、当事者として考えられるような構成とし、考えクラス共有も必須とした。今後は、これらの授業案を用いて授業実践を行い、生徒の反応を見る必要がある。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s252_1