臓器横断的な観点からみた移植後のドナー特異的抗体(DSA)発生要因とその影響
移植後に産生されるDSAは臓器によらず予後不良因子とされる。しかし、DSAの発生要因や発生したDSAが移植臓器へ及ぼす影響については未解明な点が多い。我々はDSAの発生とその影響において、移植臓器間での共通・相違点という観点から、臓器横断的な抗体関連拒絶に対する治療戦略の開発を目指してきた。京都大学の生体肝移植(小児173例、成人159例)、肺移植(生体182例、脳死151例)、生体腎移植(47例)レジストリを用いた解析では、移植後の累積DSA発生率は、HLA-Class1/2抗体:小児肝6.9/41.0%、成人肝1.9/15.1%、生体肺3.1/10.3%、脳死肺9.3/15.9%、生体腎2...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s121_2 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s121_2 |
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Summary: | 移植後に産生されるDSAは臓器によらず予後不良因子とされる。しかし、DSAの発生要因や発生したDSAが移植臓器へ及ぼす影響については未解明な点が多い。我々はDSAの発生とその影響において、移植臓器間での共通・相違点という観点から、臓器横断的な抗体関連拒絶に対する治療戦略の開発を目指してきた。京都大学の生体肝移植(小児173例、成人159例)、肺移植(生体182例、脳死151例)、生体腎移植(47例)レジストリを用いた解析では、移植後の累積DSA発生率は、HLA-Class1/2抗体:小児肝6.9/41.0%、成人肝1.9/15.1%、生体肺3.1/10.3%、脳死肺9.3/15.9%、生体腎2.1/8.5%であった。脳死肺移植では移植後1年以内の早期のDSA発生が多い一方、その他の臓器ではDSAは移植後経過と共に徐々に発生した。また、全ての臓器においてドナーとレシピエント間のHLAエピトープの不適合数がDSA発生に寄与した。一方で、脳死肺移植、生体腎移植ではDSA発生はグラフト予後と相関したが、小児生体肝移植では、DSAはグラフト肝の線維化、免疫抑制剤の数に影響したものの、移植後長期であっても予後への影響は乏しかった。各臓器に共通して、DSAの発生には不適合HLA分子の免疫原性が大きく関与することが示唆された。一方でDSAの影響は臓器毎に異なり、HLAの発現量や各臓器の予備能が関わると考えられた。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s121_2 |