death with functioning graftの原因から考える膵臓移植後長期管理における問題点

【背景】膵臓移植後の膵グラフト生着率は,比較的高率であるが,更なる生着率向上が望まれる.今回,膵臓移植後の課題を明確にし,グラフト生着率が向上することを目的として,膵グラフト喪失の原因として最多であるdeath with functioning graft(DWFG)に注目し,その詳細を検討した.【対象・方法】本邦において2000年から2021年までに施行され,日本膵・膵島移植研究会に登録された本邦における膵臓移植症例461例中,膵腎同時移植を行った391例を対象とし,対象症例における膵グラフト喪失をその原因別に検討し,特にDWFGの詳細(好発時期,危険因子)を検討した.【結果】全391例にお...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s158_1
Main Authors 岩上, 佳史, 土岐, 祐一郎, 山田, 大作, 剣持, 敬, 高橋, 秀典, 伊藤, 壽記, 佐々木, 一樹, 野田, 剛広, 江口, 英利, 小林, 省吾, 富丸, 慶人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s158_1

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Summary:【背景】膵臓移植後の膵グラフト生着率は,比較的高率であるが,更なる生着率向上が望まれる.今回,膵臓移植後の課題を明確にし,グラフト生着率が向上することを目的として,膵グラフト喪失の原因として最多であるdeath with functioning graft(DWFG)に注目し,その詳細を検討した.【対象・方法】本邦において2000年から2021年までに施行され,日本膵・膵島移植研究会に登録された本邦における膵臓移植症例461例中,膵腎同時移植を行った391例を対象とし,対象症例における膵グラフト喪失をその原因別に検討し,特にDWFGの詳細(好発時期,危険因子)を検討した.【結果】全391例において,膵グラフト喪失は77例(19.7%)に認められた.膵グラフト喪失の原因は頻度順にDWFG 34例,グラフト血栓症22例,慢性拒絶7例,その他14例であった.DWFGの原因は,感染症13例,心・脳疾患10例,悪性腫瘍4例,ほか7例であった.DWFGによるグラフト喪失時期は,移植からの経過時間に依らず様々であった.DWFGによるグラフト喪失の危険因子を多変量解析にて検討すると,レシピエントの糖尿病罹患期間が唯一の独立規定因子であった.【結語】DWFGの主たる原因は感染症,心・脳疾患,悪性腫瘍であり,その発症時期は移植からの経過時間に依らず様々であった.膵臓移植後の更なる膵グラフト生着率向上には,これらの疾患の発症を念頭に置いた移植後経過観察が重要であると考えられた.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s158_1