当科における小児肝移植例の長期治療成績とcarry-over期の諸問題
【緒言】当院で小児肝移植を開始し30年が経過した. 移植後晩期, carry-over期の諸問題を検討した.【方法】小児初回肝移植を行った134例を対象とし, 後方視的に解析を行った. 【結果】移植時年齢は中央値1.4歳(0.4-16.9), 胆道閉鎖症(n=100)が最多で, follow up期間中央値は22.0年(0.1-32.9)であった.移植後生存率(10年:86%, 20年:81%), グラフト生存率(10年:90%, 20年:87%)と良好であったが, 移植後10年以降にn=4のグラフト機能不全を認め, 再移植を施行し得ず全例死亡した. 成人期に達し経歴が確認できた例の95%が従...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s175_1 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
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Summary: | 【緒言】当院で小児肝移植を開始し30年が経過した. 移植後晩期, carry-over期の諸問題を検討した.【方法】小児初回肝移植を行った134例を対象とし, 後方視的に解析を行った. 【結果】移植時年齢は中央値1.4歳(0.4-16.9), 胆道閉鎖症(n=100)が最多で, follow up期間中央値は22.0年(0.1-32.9)であった.移植後生存率(10年:86%, 20年:81%), グラフト生存率(10年:90%, 20年:87%)と良好であったが, 移植後10年以降にn=4のグラフト機能不全を認め, 再移植を施行し得ず全例死亡した. 成人期に達し経歴が確認できた例の95%が従職しており, 32%が既婚者でn=7が出産を経験した. 一方で服薬アドヒアランス低下がn=18に確認され, 遠隔期に拒絶反応を生じて死亡した例も認めた.身体的成長に関して, 移植時に成長障害を認めた例も多くが移植後に急速なcatch up growthを呈したが[身長Z-score:移植時(-2.26), 1年(-1.59), 5年(-0.90), 10年(-0.55),], 成人身長Z-scoreは-0.88と健常集団に及ばなかった. 腎機能に関して, 移植後10年以降にeGFR低下がみられ, CKD有病率は移植後10年(8%),15年(19%)および20年以降(39%)と上昇し透析導入例も認めた. 【結語】小児肝移植後患者の多くが健常人と遜色ない社会生活を送っている一方で, 移植後10年以降も晩期合併症, アドヒアランス低下による死亡例を認めた. また, 適正な成人身長の獲得や晩期の腎機能障害などを考慮した多角的継続的なフォローが必要と考えられた. |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s175_1 |