ハンドヘルドダイナモメーターによるTKA患者の膝伸展筋力の検討

【目的】  人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節伸展筋(膝伸展筋)力は、安定した歩行を獲得するために重要である。  近年、ハンドヘルドダイナモメーター(HHD)を用いた下肢筋力に関する検討が報告されている。しかしながら、整形疾患のない高齢者におけるデータが多く、疾患における筋力の検討は少ない。  今回、当院におけるTKA術前、術後の膝伸展筋力をベルト固定付HHDを用いて検討したので、文献的考察を加えて報告する。 【対象】  両側変形性膝関節症の患者6例(12関節)を対象とした。(平均年齢75.8歳、平均体重53.0kg)1例は反対側にTKA施行されていた。日本整形外科学会膝関節機能判定基準は...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2007; p. 48
Main Authors 井上, 仁, 松本, 裕美, 長田, 沙織, 片岡, 晶志, 明石, 理佐, 鈴木, 綾香, 津村, 弘, 大津, 麻実, 川上, 健二, 杉本, 尚美, 中村, 佳子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2007
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2007.0.48.0

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Summary:【目的】  人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節伸展筋(膝伸展筋)力は、安定した歩行を獲得するために重要である。  近年、ハンドヘルドダイナモメーター(HHD)を用いた下肢筋力に関する検討が報告されている。しかしながら、整形疾患のない高齢者におけるデータが多く、疾患における筋力の検討は少ない。  今回、当院におけるTKA術前、術後の膝伸展筋力をベルト固定付HHDを用いて検討したので、文献的考察を加えて報告する。 【対象】  両側変形性膝関節症の患者6例(12関節)を対象とした。(平均年齢75.8歳、平均体重53.0kg)1例は反対側にTKA施行されていた。日本整形外科学会膝関節機能判定基準は平均56.7点であった。 【方法】  HDDはアニマ社製徒手筋力測定器μTasMF-01を使用した。測定は、術前と術後1週毎、杖歩行開始時、退院直前に施行し、さらに術後3ヶ月、6ヶ月に測定した。測定肢位は、膝関節90°屈曲位(90°)と、膝関節60°屈曲位(60°)であり、HDDを下腿遠位部に面ファスナーで固定した。測定は両側施行し、2回行ったうちの最大値を求めた。以上より、1)HHD値/体重(体重比)2)測定肢位3)杖歩行開始時、退院時のHHD値/体重(体重比)の比較、検討を行った。 【結果】 1)術側―90°:術側体重比の平均は、術前が0.305kg/kgであり、術後1週で0.155kg/kgと有意に低下し、術後2週で0.172kg/kg、3週で0.223kg/kgと徐々に増加した。特に6例中2例は術後3週で術前と同等となり、1例は4週で同等となった。 2)術側―60°:術側体重比は術前が0.270kg/kgであり、術後1週で0.128kg/kgと有意に低下し、術後2週で0.174kg/kg、3週で0.205kg/kgとほぼ術前値に近づいた。 3)非術側―90°:術前が0.385kg/kgであり、5例が術後も同等もしくは、徐々に増加を認め、1例のみ術後1週に有意に低下した。 4)非術側―60°:術前が0.327kg/kgであり、術後は同等あるいは軽度増加傾向が見られたが、術後1週では2例が低下した。 5)90°と60°の比較では、術側の術前に有意差が認められた。 6)杖歩行開始時の体重比は、平均0.20kg/kg前後であった。また退院時の筋力は術前と比べ0.07~0.09kg/kg(21.7%)の筋力低下を認めた。 【考察】  90°と60°ともに術側では術後1週で有意に低下していた。これは手術による侵襲が原因として最も考えられ、力を入れすぎることに対する恐怖心、痛み、可動性が関与しているものと考えられた。 1)90°-60°間では有意差は認められないものの、90°での測定値が高値を示す傾向があった。これは、測定開始時の固定、安定性の影響が否定できない。 2)非術側では、恐怖心によると考えられる術後の一時的な低下が認められたが、ほぼ同等か増加を認めた。 3)術前に比べ78.3%の筋力で退院となっていた。しかしながら退院後の体重比はさらに増加し術前値を上回っていくことが予想できる。
Bibliography:076
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2007.0.48.0