脊柱変形と重心動揺

【はじめに】 高齢者の転倒は脊柱、四肢の骨折、特に大腿骨頚部骨折等、歩行、生命予後に関して負の因子をもたらすことが多い。 転倒要因として外的・内的因子がとりだたされるが、内的因子である脊柱変形、特に円背に注目し重心の位置、移動との関連性を検討したので報告する。 【対象】 当院通所リハ利用者の円背群7名、平均83.1±5.1歳。対象群10名、平均27.2±19.8歳。 【方法】 項目:円背指標、Functional Reach Test(FRT)、重心動揺(総軌跡長、95%信頼区間での算出された楕円面積、前後成分、左右成分)、重心位置、重心移動(95%信頼区間での算出された楕円の長さ) 方法:円...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2008; p. 53
Main Authors 松木田, 康太, 山下, 導人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2008
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2008.0.53.0

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Summary:【はじめに】 高齢者の転倒は脊柱、四肢の骨折、特に大腿骨頚部骨折等、歩行、生命予後に関して負の因子をもたらすことが多い。 転倒要因として外的・内的因子がとりだたされるが、内的因子である脊柱変形、特に円背に注目し重心の位置、移動との関連性を検討したので報告する。 【対象】 当院通所リハ利用者の円背群7名、平均83.1±5.1歳。対象群10名、平均27.2±19.8歳。 【方法】 項目:円背指標、Functional Reach Test(FRT)、重心動揺(総軌跡長、95%信頼区間での算出された楕円面積、前後成分、左右成分)、重心位置、重心移動(95%信頼区間での算出された楕円の長さ) 方法:円背指標はX-P上で1.第7頚椎椎体の中心と2.仙骨上面の中心、3.頂椎の中心3点を決定。1.2.間の距離をIとし、3.からIへの垂直線をHとする。直線1.3.とHのなす角をα、直線2.3.とHのなす角をβとし、α+βを円背指標とした。FRTは利き手上肢、前方のみ計測した。重心動揺はZebirs社製Foot Printを用いて60秒間の静止立位を保持し、両踵部を付け計測。重心位置は静止立位時で接地足底面の前後の最長から百分率により算出した。重心移動はFRT時にFoot Printを用いて計測。  分析:1)円背群と対象群における各々の有意差を検討した。2)すべての各項目間においてPeasonの相関関係を危険率5%で行った。 【結果】 1)すべての検査項目において有意差はみられた(P<0.05) 2)円背群、対象群ともに有意に相関 ・円背群 円背指標:左右成分(r=-0.76) ・対象群 円背指標:左右成分(r=-0.68) 円背群のみ有意に相関 円背指標:総軌跡長(r=-0.89)、総軌跡長:左右成分(r=0.82) FRT:左右成分(r=-0.77) 【考察】 脊柱後弯における重心は健常人よりも前方にあり、歩行、移動時には不安定性をもたらすことが予測される。円背指標、FRT、重心移動、重心位置の比較・検討を行った。重心位置において円背群は対象群に比べ重心位置が後方に存在した。円背指標とFRT、楕円の長さ、前後成分との相関関係はみられなかったが、円背群、対象群ともに円背指標と左右成分との間に有意な相関関係がみられた。円背群では静止立位時にて左右への重心移動が強くみられ、重心安定性の股関節による代償と推測される。  長谷によると、足関節には背屈モーメントが作用し、下腿三頭筋により身体が前方へ倒れることを防ぎ保持している。これらより円背群は重心位置が後方にあり、後方へ転倒する傾向にあり、歩行時では後方にある重心を前方に移動させ歩行し、下腿三頭筋により重心を保持できないと前方へ転倒すると示唆される。  今回、姿勢保持筋である下腿三頭筋、股関節内・外転筋等の検討はしなかったが、次回測定とともに筋群に対する転倒へのアプローチを行っていきたい。
Bibliography:53
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2008.0.53.0