脳死肝移植18年後に発症した肝細胞癌に対し胸腔鏡下に切除した1例

【はじめに】脳死肝移植後に発症した肝細胞癌に対し、鏡視下に肝切除した報告はほとんどない。脳死肝移植術18年後に発症した肝細胞癌に対し、胸腔鏡下に切除した1例を経験したので報告する。【症例】64歳男性。2003年1月、Mayo clinicにて肝細胞癌・B型肝硬変に伴う非代償性肝硬変に対して脳死肝移植術施行。術後は当院肝臓内科にてB型肝炎抗ウイルス治療、免疫抑制療法を実施。経過中肝酵素上昇は一度も認めず、HBV-DNAは陰性を維持。拒絶の兆候も。2021年11月に肝S4に25mm大の腫瘤性病変を指摘。AFPの上昇は認めなかったが、肝細胞癌の診断。横隔膜浸潤も疑われ切除が検討された。肝予備能はIC...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s383_2
Main Authors 梅邑, 晃, 新田, 浩幸, 安藤, 太郎, 天野, 怜, 武田, 大樹, 佐々木, 章, 菅野, 将史, 片桐, 弘勝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s383_2

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Summary:【はじめに】脳死肝移植後に発症した肝細胞癌に対し、鏡視下に肝切除した報告はほとんどない。脳死肝移植術18年後に発症した肝細胞癌に対し、胸腔鏡下に切除した1例を経験したので報告する。【症例】64歳男性。2003年1月、Mayo clinicにて肝細胞癌・B型肝硬変に伴う非代償性肝硬変に対して脳死肝移植術施行。術後は当院肝臓内科にてB型肝炎抗ウイルス治療、免疫抑制療法を実施。経過中肝酵素上昇は一度も認めず、HBV-DNAは陰性を維持。拒絶の兆候も。2021年11月に肝S4に25mm大の腫瘤性病変を指摘。AFPの上昇は認めなかったが、肝細胞癌の診断。横隔膜浸潤も疑われ切除が検討された。肝予備能はICG R15:75%と高値、アシアロシンチグラフィーでもLHL15:0.827と低下を認めたが門脈―大循環シャントの影響と判断。Child-pugh score:A(5点)であり部分切除可能と判断。横隔膜合併切除を伴う肝部分切除を想定し、経胸的アプローチを計画した。片肺換気・胸腔鏡下に開始。浸潤が疑われる横隔膜を切除しながら肝を露出。腫瘍周囲の肝実質はラジオ波前凝固の後にClamp crush法で離断。横隔膜合併肝S4部分切除術を施行した。手術時間265分、出血量137ml。合併症なく10病日に退院。術後約5ヶ月、再発を認めない。病理結果は中分化型肝細胞癌であった。【考察】授動や脱転、圧排などの操作が最小限になるような配慮や、Pringleによる全肝の血流遮断を行わないなど、愛護的なアプローチを心がけることが移植肝に対する肝切除法として肝要と考えられる。【結語】脳死肝移植に発症した肝細胞癌に対して胸腔鏡下に切除した1例を経験した。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s383_2