DQ-DSA陽性生体肺移植レシピエントに対する両側脳死再肺移植
適切な患者選択および移植適応判断は,健全な肺移植診療において最も重要な要素のひとつである.重度の呼吸不全患者に対して行う肺移植にリスクのない手術はありえないが,単一の因子であれば綿密な評価にもとづく準備および合併症予防により対応できる場合が多く,移植実現の可能性を粘り強く検討すべきである.いっぽう複数の重大なリスク因子が同時に存在する場合には実施に慎重にならざるをえない.本セッションにあたり我々は,15歳男性,一側生体肺葉移植3年後にBOSによる重度2型呼吸不全を発症し、移植待機施設における長期人工呼吸管理後、DQ-DSA陽性脳死両肺移植を行った症例の治療経験を紹介する.周術期に血漿交換療法,...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s148_1 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s148_1 |
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Summary: | 適切な患者選択および移植適応判断は,健全な肺移植診療において最も重要な要素のひとつである.重度の呼吸不全患者に対して行う肺移植にリスクのない手術はありえないが,単一の因子であれば綿密な評価にもとづく準備および合併症予防により対応できる場合が多く,移植実現の可能性を粘り強く検討すべきである.いっぽう複数の重大なリスク因子が同時に存在する場合には実施に慎重にならざるをえない.本セッションにあたり我々は,15歳男性,一側生体肺葉移植3年後にBOSによる重度2型呼吸不全を発症し、移植待機施設における長期人工呼吸管理後、DQ-DSA陽性脳死両肺移植を行った症例の治療経験を紹介する.周術期に血漿交換療法,IVIG,抗胸腺グロブリンを用いた脱感作療法を併施した.移植後1年現在において抗体関連型拒絶反応および脱感作療法にともなう有害事象なく良好な移植肺機能を維持し,活動的な学校生活に復している.本症例では,1. 術前の長期人工呼吸器装着,2. 再移植,3. DQ-DSA陽性といったレシピエント,手術,ドナー全因子における複数のリスクを有する移植であった.適応判断においては,レシピエントの良好なリハビリ状況,ドナー肺の機能,脱感作療法が実施可能な斡旋スケジュールなどを考慮し,患者および家族への十分な説明の上,実施を最終決断した.待機施設との連携,リスク因子の相補的な解釈の重要性を再認識した経験であった. |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s148_1 |