心停止肝細胞の機能評価と機械灌流が機能に与える影響

肝臓移植は末期肝不全に対する唯一の治療として確立されているが、手術侵襲が高く合併症が多いという欠点を有している。これに対して肝細胞移植は安全・簡便・低侵襲といった多くの魅力を備えている。一部の代謝性肝疾患に対しては、肝細胞移植の有用性が臨床で報告されている。しかしながら肝細胞移植を普及させるには解決されるべきいくつかの課題も残存している。中でも肝臓のドナーが不足しているというのは大きな課題といえる。我々はこの課題を解決するために心停止ドナー肝を利用し、心停止肝細胞の機能を評価するとともに、当科がこれまで温阻血再灌流障害への有用性を報告してきた機械灌流を併用し心停止肝細胞に与える影響を検証した。...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s308_2
Main Authors 柏舘, 俊明, 海野, 倫明, 猪村, 武弘, 宮城, 重人, 後藤, 昌史, 滝戸, 成人, 山名, 浩樹, 藤尾, 淳, 西牧, 宏泰, 亀井, 尚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s308_2

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Summary:肝臓移植は末期肝不全に対する唯一の治療として確立されているが、手術侵襲が高く合併症が多いという欠点を有している。これに対して肝細胞移植は安全・簡便・低侵襲といった多くの魅力を備えている。一部の代謝性肝疾患に対しては、肝細胞移植の有用性が臨床で報告されている。しかしながら肝細胞移植を普及させるには解決されるべきいくつかの課題も残存している。中でも肝臓のドナーが不足しているというのは大きな課題といえる。我々はこの課題を解決するために心停止ドナー肝を利用し、心停止肝細胞の機能を評価するとともに、当科がこれまで温阻血再灌流障害への有用性を報告してきた機械灌流を併用し心停止肝細胞に与える影響を検証した。方法は、呼吸停止から心停止を誘導したF344ラットを、肝臓摘出後にそのまま肝細胞分離をする群と、機械灌流を行った後に肝細胞分離をする群に分け、体重あたりの収量と分離肝細胞の機能を評価した。結果は、機械灌流を行った群で体重あたりの肝細胞収量は有意に多かった(p<0.05)。心停止ドナー肝の機械灌流は肝細胞分離時の収量の点において有利である可能性が示唆されたが、現在アンモニア除去試験やADP/ATP比を検証することでその機能評価を行っており、その結果を今後の展望とともに報告する。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s308_2