オピオイド鎮痛薬の適正使用-オピオイド鎮痛薬の有効性と限界
「はじめに」1986年に世界保健機関(World Health Organization; WHO)から"Cancer Pain Relief(がんの痛みからの開放)"が公表されて以来, 世界中でWHO方式3段階がん疼痛治療ラダーが普及し, がん疼痛治療にモルヒネが広く用いられるようになった. しかしながら, 日本におけるモルヒネの消費量は, 近年徐々に増加しているものの, 先進諸国と比較すると遥かに少ないのが現状である. こうしたことは医療従事者や患者またはその家族がもつモルヒネに対する誤解, すなわち, モルヒネの強度の精神依存に対する懸念がその原因の一つであると考えら...
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Published in | Inflammation and Regeneration Vol. 26; no. 2; pp. 96 - 100 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本炎症・再生医学会
2006
日本炎症・再生医学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-9693 1880-8190 |
DOI | 10.2492/inflammregen.26.96 |
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Summary: | 「はじめに」1986年に世界保健機関(World Health Organization; WHO)から"Cancer Pain Relief(がんの痛みからの開放)"が公表されて以来, 世界中でWHO方式3段階がん疼痛治療ラダーが普及し, がん疼痛治療にモルヒネが広く用いられるようになった. しかしながら, 日本におけるモルヒネの消費量は, 近年徐々に増加しているものの, 先進諸国と比較すると遥かに少ないのが現状である. こうしたことは医療従事者や患者またはその家族がもつモルヒネに対する誤解, すなわち, モルヒネの強度の精神依存に対する懸念がその原因の一つであると考えられる. そこで, 本稿ではモルヒネの鎮痛作用と副作用との関係, さらには慢性疼痛下におけるモルヒネの精神依存形成抑制機構に関する最近の知見を紹介する. 「モルヒネの用量と副作用の関連性」モルヒネは鎮痛, 便秘, 嘔気・嘔吐など様々な薬理作用を示す. 臨床において, 主作用である鎮痛作用と種々の副作用の発現はモルヒネの投与量や投与経路などにより異なる. 図1は, 動物実験におけるモルヒネの各種薬理作用の50%有効用量(50% Effective Dose; ED50)をまとめた結果である. |
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ISSN: | 1880-9693 1880-8190 |
DOI: | 10.2492/inflammregen.26.96 |