THA術後症例に歩容改善を目的に理学療法を行なった一例
【はじめに】 一般に人工関節全置換術は,可動域改善,疼痛の軽減を目的に行われる.しかし,術後症状の残存する例も見られる.今回術後早期より可動域訓練,筋力訓練を行ったにも関らず、ROM制限,疼痛が術後一ヶ月まで残存し,跛行を呈した症例を経験した.この症例に対して歩容改善に着目して理学療法を行った結果、良好な結果が得られたので考察を加え報告する. 【症例呈示】 72歳 女性 診断名:右変形性股関節症現病歴:数年前より右股関節痛あり、最近になり疼痛増強しH18年3月16日手術(THA)施行. 【理学療法評価】 術前評価:ROM股関節屈曲100°伸展0°外旋30°.筋力(MMT)大殿筋3,中殿筋3,...
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Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2006; p. 22 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
九州理学療法士・作業療法士合同学会
2006
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu |
Subjects | |
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ISSN | 0915-2032 2423-8899 |
DOI | 10.11496/kyushuptot.2006.0.22.0 |
Cover
Summary: | 【はじめに】 一般に人工関節全置換術は,可動域改善,疼痛の軽減を目的に行われる.しかし,術後症状の残存する例も見られる.今回術後早期より可動域訓練,筋力訓練を行ったにも関らず、ROM制限,疼痛が術後一ヶ月まで残存し,跛行を呈した症例を経験した.この症例に対して歩容改善に着目して理学療法を行った結果、良好な結果が得られたので考察を加え報告する. 【症例呈示】 72歳 女性 診断名:右変形性股関節症現病歴:数年前より右股関節痛あり、最近になり疼痛増強しH18年3月16日手術(THA)施行. 【理学療法評価】 術前評価:ROM股関節屈曲100°伸展0°外旋30°.筋力(MMT)大殿筋3,中殿筋3,大腿四頭筋4.疼痛:股関節前内側,殿部に歩行時・運動時痛(VAS 9/10)がある.立位・歩行姿勢:常に骨盤前傾し,股・膝屈曲位にあり,上部体幹の右側屈が強くみられた. 術後評価: ROM(右)股関節屈曲90°伸展0°外旋10°.筋力(MMT)大殿筋2、大腿四頭筋4、中殿筋2.疼痛:右立脚後期に殿部痛あり,圧痛、運動時痛立位姿勢:右膝屈曲,骨盤前傾,股関節内転・内旋位.歩行観察:右下肢立脚中期から後期にかけて股関節伸展乏しく,骨盤右回旋,右骨盤前傾、体幹左回旋、股関節内転・内旋、距骨下関節回内が増大する.膝関節は歩行時常に屈曲位であった. 【治療内容】 1.筋収縮訓練(前脛骨筋、ヒラメ筋、大殿筋) 2.坐圧コントロール 3.歩容改善訓練 【結果】 上記の治療を実施し,ROM-Tで股関節屈曲105°,伸展10°,外旋30°.筋力(MMT)大殿筋4,大腿四頭筋4,中殿筋3と向上がみられた. 立位姿勢は右膝伸展機能向上,骨盤前傾改善.歩容は,右立脚後期の骨盤右回旋の軽減,相対的に体幹右回旋,股・膝関節の伸展機能向上が得られ,殿部痛は軽減した. 【考察】 術後早期の歩行では右立脚後期に骨盤右回旋,体幹・股・膝関節屈曲対応で,大殿筋による左前方への重心移動能力の低下がみられ,このことにより骨頭が後方位のまま荷重ストレスがかかり,後方関節包・軟部組織への機械的ストレスにより疼痛が出現したと推察した. 訓練開始初期のアプローチとして,股・膝関節伸展可動域訓練,筋力訓練での歩容改善を図った.しかし,可動域,筋力の量的な向上はみられたものの,歩行時には2関節筋有意となり,歩容の変化,疼痛軽減はあまりみられなかった.そこで単関節筋である前脛骨筋,ヒラメ筋の筋収縮促通による膝関節伸展機能向上,歩行フェイズ訓練での右立脚後期での大殿筋収縮を促した. 右立脚後期での大殿筋収縮改善により,骨盤・下肢のニュートラルポジションでの荷重が促され,股関節後包関節包の機械的ストレスが軽減し,殿部痛軽減に至ったと推察する. |
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ISSN: | 0915-2032 2423-8899 |
DOI: | 10.11496/kyushuptot.2006.0.22.0 |