臓器移植における倫理的ジレンマを題材にした授業実践報告

生徒の思考を重視し、課題発見及び解決能力を身に付けることを目指した授業実践として、臓器移植における倫理的ジレンマの1つである「匿名の原則」を題材にした。2021年度に中学3年生117名を対象に行った。2年生の時、臓器移植の基礎知識、自分や家族の気持ち、意思決定について考える授業を受けた。3年生でドナーとレシピエントの「匿名の原則」、すなわち種々のリスク回避のためにドナー家族とレシピエントの匿名性を担保する原則を取り上げた。「匿名の原則」は、簡単には是非の判断ができない題材である。原則論の説明後、①ドナーの気持ち、②ドナー家族の気持ち、③レシピエントの気持ち、④レシピエント家族の気持ちをそれぞれ...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s352_1
Main Authors 朝居, 朋子, 佐藤, 毅
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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Summary:生徒の思考を重視し、課題発見及び解決能力を身に付けることを目指した授業実践として、臓器移植における倫理的ジレンマの1つである「匿名の原則」を題材にした。2021年度に中学3年生117名を対象に行った。2年生の時、臓器移植の基礎知識、自分や家族の気持ち、意思決定について考える授業を受けた。3年生でドナーとレシピエントの「匿名の原則」、すなわち種々のリスク回避のためにドナー家族とレシピエントの匿名性を担保する原則を取り上げた。「匿名の原則」は、簡単には是非の判断ができない題材である。原則論の説明後、①ドナーの気持ち、②ドナー家族の気持ち、③レシピエントの気持ち、④レシピエント家族の気持ちをそれぞれ考え、そして互いに考えを共有する時間を設けた。生徒の97%以上が関心度5(とても関心をもてた)または4を示した。関心が持てた理由として、「普段は話題にならないテーマ」「生徒間において意見交換ができた」「当事者の立場になって深く考えたこと」等が挙げられた。生徒は過去の学習内容と合わせて考え、自分の意見をまとめ、他者の意見を聞くことで当事者の立場になり、思考をより深めることができた。以上から、倫理的ジレンマを考える授業実践の有用性が示唆された。臓器移植の基礎知識を得た後、当事者性や多様な価値観について考え課題発見及び解決能力の習得につながるように、段階的な授業実践を検討する意義が示された。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s352_1