不妊症腎移植レシピエントにおける体外受精による妊娠・出産の一例

(背景)腎移植レシピエントの不妊症に対する治療法は確立していない(症例)36歳女性(妊娠時)、原疾患は膜性増殖性腎症。挙児希望あり、34歳時に夫をドナーとするABO適合生体腎移植を行った。免疫抑制剤はFK、MMF、PSLを投与。術後、DSAは検出されなかった。術後1年5ヶ月からMMFをCyAに変更した。卵管閉塞を原因とする不妊症を併発しており、体外受精(IVF)の方針とした。3回目の胚移植にて妊娠が成立、35週で帝王切開にて出産した。新生児の体重は2131gで健康であった。妊娠中期に入るとCre値が上昇し、出産直前には2.7mg/dlとなった。妊娠経過中に血圧上昇はなく、タンパク尿も軽微であっ...

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Published in移植 Vol. 57; no. Supplement; p. s369_2
Main Authors 鈴木, 一史, 青山, 博道, 田島, 進, 村山, 尚子, 伊藤, 舞香, 西郷, 健一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
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Summary:(背景)腎移植レシピエントの不妊症に対する治療法は確立していない(症例)36歳女性(妊娠時)、原疾患は膜性増殖性腎症。挙児希望あり、34歳時に夫をドナーとするABO適合生体腎移植を行った。免疫抑制剤はFK、MMF、PSLを投与。術後、DSAは検出されなかった。術後1年5ヶ月からMMFをCyAに変更した。卵管閉塞を原因とする不妊症を併発しており、体外受精(IVF)の方針とした。3回目の胚移植にて妊娠が成立、35週で帝王切開にて出産した。新生児の体重は2131gで健康であった。妊娠中期に入るとCre値が上昇し、出産直前には2.7mg/dlとなった。妊娠経過中に血圧上昇はなく、タンパク尿も軽微であった。Cre値は出産後、速やかに改善した。出産後にDSAは検出されなかった。(考察)本症例での経過中の腎機能悪化は、物理的圧迫が原因と考えられ許容できた。IVFの適応については、移植腎機能、血圧管理が良好であること、適切な免疫抑制剤、タンパク尿がないことが指摘されている。また免疫抑制の低下、高血圧、子癇、妊娠糖尿病のリスクがあるため、移植1−2年以降の妊娠が推奨だが、待機期間が長すぎると移植腎の機能低下等のリスクが高まる。(結語)注意深い症例選択と管理により、IVFによる不妊治療は現実的な選択である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s369_2