腎移植後、JCウイルスによる進行性多巣性白質脳症(PML)の一例

【緒言】免疫抑制療法の腎移植成績の大きな改善をもたらしたが、一方で日和見感染症はいまだ移植腎および患者生命予後に影響を与えうる。今回、腎移植後にJCウイルス(JCV)による進行性多巣性白質脳症(PML)を発症した症例を経験したので報告する。【症例】SLEを原疾患とする末期腎不全で兄をドナーとする生体腎移植を17年前に施行した50歳代の女性。タクロリムス(TAC)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、メチルプレドニゾロン (mPSL)で移植腎機能良好で免疫抑制を維持していたが、急激な認知機能低下と左半身麻痺を発症した。頭部MRI画像所見と髄液PCR検査よりJCV-DNAが検出されたことからPM...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s284_2
Main Authors 岩見, 大基, 南園, 京子, 石川, 暢夫, 佐々木, 元, 大山, 雄大, 西田, 翔, 須田, 遼祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
Online AccessGet full text
ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s284_2

Cover

More Information
Summary:【緒言】免疫抑制療法の腎移植成績の大きな改善をもたらしたが、一方で日和見感染症はいまだ移植腎および患者生命予後に影響を与えうる。今回、腎移植後にJCウイルス(JCV)による進行性多巣性白質脳症(PML)を発症した症例を経験したので報告する。【症例】SLEを原疾患とする末期腎不全で兄をドナーとする生体腎移植を17年前に施行した50歳代の女性。タクロリムス(TAC)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、メチルプレドニゾロン (mPSL)で移植腎機能良好で免疫抑制を維持していたが、急激な認知機能低下と左半身麻痺を発症した。頭部MRI画像所見と髄液PCR検査よりJCV-DNAが検出されたことからPMLと診断した。TACとMMFをエベロリムス(EVR)に変更したがのちに中止、mPSLを漸減し最終的にmPSL2mg単剤管理とした。同時に治療効果報告のある塩酸メフロキン(抗マラリア薬)、ミルタザピン(5HT2Aセロトニン受容体拮抗薬)を開始した。現在PML発症から6ヶ月(治療開始より4ヶ月)が経過しているが神経症状の進行は止まり拒絶反応の発症もなく、認知機能低下や左片麻痺等の後遺症は残存したものの退院に向けてリハビリを継続中である。【考察】腎移植後PMLはJCVによる中枢神経脱髄性疾患でまれな疾患であるが特異的な治療法はなく生命予後は発症後数ヶ月と極めて不良である。有効な治療法の確立が望まれる。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s284_2