ヘパリン投与不可能な中枢型下肢深部静脈血栓症(DVT)に対して生体腎移植を施行した一例
【経過】症例は46歳男性, 原疾患不明慢性腎不全に対して母をドナーとする先行的生体腎移植術目的で入院. 入院直前に施行した採血でDダイマーが上昇しており, 下肢エコー検査で左浅大腿静脈血栓を認めた. また右内頸静脈に透析用カテーテルを留置しヘパリンを使用して術前透析を行ったところ, カテーテルに著明な血栓形成を認めた. HIT抗体1.0と弱陽性が判明し, ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を含めた血液凝固因子異常が背景にある可能性が考えられた. 生体腎移植術は延期, 内シャント造設しワーファリン開始とした. 1カ月後にメシル酸ナファモスタットを使用して維持透析導入とした. 6か月後にヘパリン...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s371_3 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2022
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.57.Supplement_s371_3 |
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Summary: | 【経過】症例は46歳男性, 原疾患不明慢性腎不全に対して母をドナーとする先行的生体腎移植術目的で入院. 入院直前に施行した採血でDダイマーが上昇しており, 下肢エコー検査で左浅大腿静脈血栓を認めた. また右内頸静脈に透析用カテーテルを留置しヘパリンを使用して術前透析を行ったところ, カテーテルに著明な血栓形成を認めた. HIT抗体1.0と弱陽性が判明し, ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を含めた血液凝固因子異常が背景にある可能性が考えられた. 生体腎移植術は延期, 内シャント造設しワーファリン開始とした. 1カ月後にメシル酸ナファモスタットを使用して維持透析導入とした. 6か月後にヘパリンを使用して透析を行ったところシャント閉塞をきたした. HIT抗体は陰性であったがヘパリンにより過凝固状態が誘発されることから, HITに準じた周術期対応が必要と考えた. 7か月後に腎移植術目的に入院. 左浅大腿静脈血栓は残存しておりワーファリンをアルガトロバン持続投与に変更. 術野ではヘパリン生食は使用せず生食を使用した. 血流再開後, 移植腎血流は良好で初尿も速やかに見られた. 術後5日でアルガトロバン持続投与を終了しエドキサバン内服開始とした. 術後19日目 血清クレアチニン 2.06 mg/dLで軽快退院となった.【考察】先行的生体腎移植症例はヘパリン投与歴がないことが多く, ヘパリン投与の可否が不明なまま周術期に初回投与がなされるものと思われる. HITを発症した場合グラフトロスに至るような血栓症を発症するリスクもあるが, 術前に察知することは極めて困難であると考えた. |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.57.Supplement_s371_3 |