生体肝移植後ステロイド抵抗性拒絶反応に対するATG使用症例の検討

背景:生体肝移植後に生じ得る急性T細胞関連型拒絶の1­–2割を占めるステロイド抵抗性拒絶反応(steroid-resistant rejection:SRR)に対する抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(antithymocyte globulin:ATG)は2014年に保険適応となった。安全性と有効性に関する知見は未だ限られており、今回当院での治療成績を調査した。方法:対象は2017年4月から2022年3月までに生体肝移植後SRRに対してATG(1.5 mg/kg、7日間以上を原則)を使用した6例(移植時小児2例、成人4例)。原疾患は小児:胆道閉鎖症1例、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1例、成人...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s386_2
Main Authors 櫻井, 悠人, 蛭川, 和也, 入江, 友章, 菅原, 寧彦, 本田, 正樹, 磯野, 香織, 嶋田, 圭太, 日比, 泰造
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s386_2

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Summary:背景:生体肝移植後に生じ得る急性T細胞関連型拒絶の1­–2割を占めるステロイド抵抗性拒絶反応(steroid-resistant rejection:SRR)に対する抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(antithymocyte globulin:ATG)は2014年に保険適応となった。安全性と有効性に関する知見は未だ限られており、今回当院での治療成績を調査した。方法:対象は2017年4月から2022年3月までに生体肝移植後SRRに対してATG(1.5 mg/kg、7日間以上を原則)を使用した6例(移植時小児2例、成人4例)。原疾患は小児:胆道閉鎖症1例、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1例、成人:NASH 2例、PBC+AIH 1例、Wilson病1例。結果:ATG治療は移植後中央値65.5日(10-6035日)で導入、ATG使用前のステロイドパルス療法は2回(1-4回)、ステロイドパルス療法-ATG開始日までの期間は7.5日(4-8日)、またATG投与期間は11日(1-14日)。有害事象は4例(薬疹疑い1、敗血症1、CMV抗原血症2)。3例はATG投与開始後、数日〜数週でグラフト肝機能が正常化し治療効果あり。1例はATG投与後も肝酵素高値遷延し、エベロリムス追加。薬疹疑いは1日で投与中止し以降は徐々にグラフト肝機能回復。敗血症は12日目に投与中止したが、その後も感染症の制御に難渋し約4ヶ月後に死亡に至った。結語:ATGは生体肝移植後SRRに対する治療戦略の中核を成しており、小児・成人に対して比較的安全に使用可能であるが、アレルギー反応、CMV抗原血症を含む感染症などの短期的有害事象が起こることを念頭に置き、導入後は投与継続の可否につき慎重な判断を必要とする。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s386_2