異種移植の臨床応用に向けた展望
臓器移植は、末期臓器不全に対する根治的治療として世界的に定着しているが、ドナー不足は深刻であり、その対策は急務である。ブタをドナーとする異種移植はドナー不足の究極の解決策となるが、ブタ・霊長類間の免疫・凝固・炎症反応の制御が課題となる。しかし遺伝子改変技術の進歩に伴い、複数の異種抗原除去およびヒト補体・凝固・炎症抑制タンパクなどを発現する遺伝子改変ブタが作出され、さらに免疫抑制療法が改良された結果、非ヒト霊長類への異種心臓で8ヶ月以上、腎臓で1年以上の長期生着が得られるようになった。 これを受けて2022年1月に米国で、10種類の遺伝子改変ブタ心臓が心臓病患者に移植され2ヶ月間機能し、異種移植...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s210_1 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2023
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.58.Supplement_s210_1 |
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Summary: | 臓器移植は、末期臓器不全に対する根治的治療として世界的に定着しているが、ドナー不足は深刻であり、その対策は急務である。ブタをドナーとする異種移植はドナー不足の究極の解決策となるが、ブタ・霊長類間の免疫・凝固・炎症反応の制御が課題となる。しかし遺伝子改変技術の進歩に伴い、複数の異種抗原除去およびヒト補体・凝固・炎症抑制タンパクなどを発現する遺伝子改変ブタが作出され、さらに免疫抑制療法が改良された結果、非ヒト霊長類への異種心臓で8ヶ月以上、腎臓で1年以上の長期生着が得られるようになった。 これを受けて2022年1月に米国で、10種類の遺伝子改変ブタ心臓が心臓病患者に移植され2ヶ月間機能し、異種移植が臓器不足解消の現実的な選択肢となることが強く認識された。現在、異種移植の臨床試験開始に向けた指針作りが国際的に本格化しており、国際的な前臨床研究の進捗や、臨床応用に向けた動向を正確に把握するとともに、我が国においても、遺伝子改変動物由来臓器をヒトに応用するために、感染症管理や臓器の免疫原性を含めた品質や安全性評価のガイドラインの策定を始め、様々な課題を整理する必要がある。今回のシンポジウムではこれらの点を踏まえ、異種移植の臨床応用への展望を概説する。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.58.Supplement_s210_1 |