胸郭変形と肺移植:高度側弯・漏斗胸・扁平胸郭への対応

「高度な胸郭変形」は肺移植の適応除外項目とされる。しかし胸郭変形があっても肺移植によって元気になると予想される患者においては肺移植の適応があると臨床上は考えられる。併存し得る胸郭変形には、側弯症、漏斗胸、扁平胸郭などがあるが、グラフト機能を良好に保つために変形に応じた工夫が必要なことがある。当院にて行った胸郭変形を有する肺移植症例を紹介する。まず側弯症である。側弯症患者では、蛇行する脊椎が一側の胸腔を狭小化し得る。グラフトが狭い胸腔に納まるかということや、吻合後の気管支や肺静脈が弯曲した脊椎によって圧迫狭窄する可能性があることに注意を要する。当院では右高度側弯症を有する二症例に肺移植を行った(...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s149_1
Main Authors 酒寄, 雅史, 中尾, 啓太, 嶋田, 善久, 叢, 岳, 山口, 美保, 油原, 信二, 山谷, 昂史, 長野, 匡晃, 大坪, 巧育, 川島, 光明, 此枝, 千尋, 佐藤, 雅昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s149_1

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Summary:「高度な胸郭変形」は肺移植の適応除外項目とされる。しかし胸郭変形があっても肺移植によって元気になると予想される患者においては肺移植の適応があると臨床上は考えられる。併存し得る胸郭変形には、側弯症、漏斗胸、扁平胸郭などがあるが、グラフト機能を良好に保つために変形に応じた工夫が必要なことがある。当院にて行った胸郭変形を有する肺移植症例を紹介する。まず側弯症である。側弯症患者では、蛇行する脊椎が一側の胸腔を狭小化し得る。グラフトが狭い胸腔に納まるかということや、吻合後の気管支や肺静脈が弯曲した脊椎によって圧迫狭窄する可能性があることに注意を要する。当院では右高度側弯症を有する二症例に肺移植を行った(一例は脳死両肺移植、一例は生体両肺葉移植)。脳死肺移植症例ではグラフトの右肺下葉を摘除し右上中葉と左全肺を移植することで胸郭に適切な形でグラフトを配置した。生体肺移植症例では、吻合後の右気管支B6の椎体による圧迫狭窄を懸念しレシピエント気管支切離ラインを気管輪に水平ではなく斜めに切離する工夫を行った。漏斗胸については肋軟骨離断を伴う部分胸骨挙上を併置した両肺移植症例を紹介する。扁平胸郭は比較的多い胸郭変形である。グラフトが実胸郭に比し大きい場合、グラフトの浮腫が軽減してから本閉胸とする二期的閉鎖を考慮する。胸郭変形を有する患者の肺移植においては個々の胸郭に応じた工夫が必要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s149_1