腎移植自験例における抗HLA抗体と移植腎組織および臨床経過の特徴についての検討

【諸言】同種抗原に対する抗体が移植腎の予後を損なうことが明らかとなっている。近年抗体の検出が広く行われるようになり、拒絶反応の治療成績向上が期待されているが、慢性抗体関連拒絶への有効な治療法は確立されていない。【対象、目的と方法】2002年1月から2021年12月までに昭和大学病院で実施された腎移植123例のうち88例にスクリーニング検査を行った。廃絶後に行った3例を除外して85例を対象とした。対象は移植片が生着中の患者で、抗体関連拒絶が疑われる時には時期を問わず行い、経過が安定している患者においては移植後6ヶ月以上経過したのちに定期的に実施している。スクリーニング検査でclass I/IIい...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s323_1
Main Authors 吉武, 理, 加藤, 容二郎, 青木, 武士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s323_1

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Summary:【諸言】同種抗原に対する抗体が移植腎の予後を損なうことが明らかとなっている。近年抗体の検出が広く行われるようになり、拒絶反応の治療成績向上が期待されているが、慢性抗体関連拒絶への有効な治療法は確立されていない。【対象、目的と方法】2002年1月から2021年12月までに昭和大学病院で実施された腎移植123例のうち88例にスクリーニング検査を行った。廃絶後に行った3例を除外して85例を対象とした。対象は移植片が生着中の患者で、抗体関連拒絶が疑われる時には時期を問わず行い、経過が安定している患者においては移植後6ヶ月以上経過したのちに定期的に実施している。スクリーニング検査でclass I/IIいずれかが陽性であれば、シングル同定検査を行う。併せて抗体陽性者は生検を行い組織を評価し、治療を検討する。【結果】患者の内訳は初回生体腎75/初回死体腎5/二次生体腎5であった。スクリーニング検査で18例(21.2%)の陽性所見を得、続くシングル同定検査では12例(66.7%)がDSAであった。DSA陽性の11例に生検を行った結果、7例(63.6%)で慢性活動性抗体関連拒絶と診断された。メチルプレドニソロン単独または二重濾過血症交換を組み合わせた治療を行った結果、2例が廃絶に至ったものの、5例は腎機能を維持している。治療前後のDSAをMFIで比較すると一部の症例で下降を認めたものの、一定の傾向は認められなかった。【考察】抗HLA抗体が強く関与する慢性活動性抗体関連拒絶は移植腎の予後を損なう主な原因となっている。抗体産生予防や制御が課題であり、今後の知見の積み重ねが必要と考えられた。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s323_1