摘出手術中に臓器提供ができないと判断された場合の脳死ドナー対応

【はじめに】当院では、これまでに18例の脳死下臓器提供の経験がある。今回、肝臓のみの脳死下臓器提供を経験した。1臓器だけの適応は初めてであり、臓器提供できない場合を想定し病院としての対応を慎重に協議した。【症例の適応判断経過】50代男性。原疾患は心筋梗塞、既往歴に糖尿病があった。原疾患、既往歴、検査データーから心臓、肺、膵臓、腎臓は適応と判断された。肝臓は、肝臓外科チームにコンサルトし、慎重に適応を判断、適応ありとされた。院内会議で臓器提供は許可されたが、摘出手術時に肝臓が摘出できなかった場合のドナー対応について慎重に検討することになった。【結果】当院では院内会議で検討した結果,手術中の摘出チ...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s284_3
Main Authors 吉川, 充史, 剣持, 敬, 加藤, 櫻子, 纐纈, 一枝, 宮島, 由佳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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Summary:【はじめに】当院では、これまでに18例の脳死下臓器提供の経験がある。今回、肝臓のみの脳死下臓器提供を経験した。1臓器だけの適応は初めてであり、臓器提供できない場合を想定し病院としての対応を慎重に協議した。【症例の適応判断経過】50代男性。原疾患は心筋梗塞、既往歴に糖尿病があった。原疾患、既往歴、検査データーから心臓、肺、膵臓、腎臓は適応と判断された。肝臓は、肝臓外科チームにコンサルトし、慎重に適応を判断、適応ありとされた。院内会議で臓器提供は許可されたが、摘出手術時に肝臓が摘出できなかった場合のドナー対応について慎重に検討することになった。【結果】当院では院内会議で検討した結果,手術中の摘出チームの最終評価で摘出不可となった場合、手術室にて主科である臓器移植科医師が人工呼吸器を外す方針であることを、ご家族に十分説明し承諾を得た。今回は,無事肝臓の摘出がされたが、病院として改めて手術中に臓器提供できない場合を想定する機会となった。【考察・まとめ】日本臓器移植ネットワークによると、2023年4月18日現在、938例中法的脳死判定後、臓器提供されなかった症例が9症例(0.96%)と1%に満たないが、摘出手術中に悪性腫瘍が発見される等、摘出できない場合があった。法的脳死判定後、摘出手術中に最終的に臓器提供できなくなるドナーの対応について、病院としての方針を検討しておくことが必要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s284_3