TKA後の重心位置の偏位

【研究目的】  我々は「TKA後の静止立位の重心動揺の総軌跡長は有意に増加するため一時的に不安定な立位姿勢を強いられる」と、第44回日本理学療法学術大会で報告した。そこで今回は片側TKAの術前と退院時で、重心位置が前後または左右のどの方向に影響をおよぼしているかと、非術側から術側へ、また前方から後方へ、或はその逆等に移動したかを調査し、知見をまとめたので報告する。 【対象と方法】  平成18年から21年にかけて当院で変形性膝関節症と診断され片側TKAを施行した86症例(女性71症例・男性15症例 右TKA 42症例・左TKA 44症例)、平均年齢75.8±6歳を対象とした。また対象者には測定の...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2010; p. 54
Main Authors 武内, 未穂, 河野, 礼治, 加藤, 孝則, 加藤, 強, 榧野, 志保, 藤田, 誠士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2010
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2010.0.54.0

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Summary:【研究目的】  我々は「TKA後の静止立位の重心動揺の総軌跡長は有意に増加するため一時的に不安定な立位姿勢を強いられる」と、第44回日本理学療法学術大会で報告した。そこで今回は片側TKAの術前と退院時で、重心位置が前後または左右のどの方向に影響をおよぼしているかと、非術側から術側へ、また前方から後方へ、或はその逆等に移動したかを調査し、知見をまとめたので報告する。 【対象と方法】  平成18年から21年にかけて当院で変形性膝関節症と診断され片側TKAを施行した86症例(女性71症例・男性15症例 右TKA 42症例・左TKA 44症例)、平均年齢75.8±6歳を対象とした。また対象者には測定の意味を充分に説明して同意の下で行った。  測定には酒井医療株式会社製「アクティブ・バランサー・EAB-100」を使用した。測定方法は裸足で開眼での静止自然立位を30秒間持続し、TKA前と退院時の計2回実施した。そこで得られた重心動揺の動揺平均中心変位X・Yの数値をまとめ、重心位置の偏位を集計した。 【結果】  TKA後の左右の重心偏位距離の平均は10.8±8.8_mm_で、前後は平均14.1 ±12.7_mm_であり、前後方向への偏位の方が大きかった。  次に術前と退院時の重心位置の変化の割合について、 1)左右偏位:術前が術側重心から術後は非術側重心への偏位者は29%で平均偏位距離は13.5±8.8_mm_。非術側重心から術側重心者は39%で平均偏位距離は14.2±8.8_mm_。術側重心がより術側重心へ偏位した者は5%で平均偏位距離2.5±1.2_mm_。非術側重心からより非術側重心者は8%で平均偏位距離7.4±3.6_mm_。変化無しは19%だった。 2)前後偏位:術前が前方重心から術後は後方重心者が28%で平均偏位距離は18.3±16.8_mm_。後方重心から前方重心者は32%で平均偏位距離は18.3±11_mm_。前方重心からより前方重心への偏位者は6%で平均偏位距離は6.6±4.3_mm_。後方重心からより後方重心偏位者は19%で平均偏位距離は8.9±5.8_mm_。変化無しは15%だった。なお3_mm_以下の偏位者を変化とした。 【考察】  TKA後の静止立位の重心位置は、重心偏位距離や重心偏位の「変化」の割合から考えて、前後方向へ影響を与えていると推測する。また、前後方向への偏位は抗重力筋の影響だと言われており、左右方向への偏位は、術後の荷重時痛消失や脚長差が影響しているのではではないかと推測される。  重心動揺には個体差が強く影響されるが、術後のバランス訓練の進め方について今回の結果を踏まえる必要があると考える。
Bibliography:147
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2010.0.54.0