補助検査として4vessel studyを行った法的脳死判定の1例

【はじめに】脳死では脊髄反射が残存していることから、時に不規則な体幹の動きは、脳幹反射や無呼吸テストの判定を複雑にする。今回我々は、腹壁の運動を認める患者に対して、補助検査として脳血管造影(4vessel study:4VS)を施行し、ラザロ徴候と判定し、法的脳死判定、臓器提供に至った症例を報告する。【症例】59歳女性。身長155cm、体重111kg。Streptococcus agalactiaeによる敗血症性ショック、心停止による蘇生後脳症と診断したが、第6病日、深昏睡、平坦脳波、聴性脳幹反射が全波消失した。患者は口頭で臓器提供の意思を示しており、家族もそれに同意した。敗血症の治療を完遂し...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s249_3
Main Authors 塚原, 紘平, 内藤, 宏道, 萩原, 万龍, 野島, 剛, 湯本, 哲也, 中尾, 篤典, 横田, 裕行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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Summary:【はじめに】脳死では脊髄反射が残存していることから、時に不規則な体幹の動きは、脳幹反射や無呼吸テストの判定を複雑にする。今回我々は、腹壁の運動を認める患者に対して、補助検査として脳血管造影(4vessel study:4VS)を施行し、ラザロ徴候と判定し、法的脳死判定、臓器提供に至った症例を報告する。【症例】59歳女性。身長155cm、体重111kg。Streptococcus agalactiaeによる敗血症性ショック、心停止による蘇生後脳症と診断したが、第6病日、深昏睡、平坦脳波、聴性脳幹反射が全波消失した。患者は口頭で臓器提供の意思を示しており、家族もそれに同意した。敗血症の治療を完遂した2週間前後より人工呼吸換気時に腹壁の動きが確認され、腹壁の刺激に一致しているため、脊髄反射と考えたが、無呼吸テストの判定に苦慮すると考え、臓器移植等管理委員会と協議し、4VSを補助検査として血流途絶を確認し、法的脳死判定を行った。無呼吸テストの際に腹壁の動きを確認したが、ラザロ徴候と判定医が判断し、無呼吸を確認した。最終的に心臓と肺が提供となった。【結語】脳死患者で脊髄反射が残存する症例は決して珍しくない。不規則な体幹の動きを呈した場合に、無呼吸テストの判定は困難とさせるが、4VSは補助検査として海外では標準的な検査であり、今後4VSを含めた総合的な脳死判定を検討していく必要があると思われる。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s249_3