ダプロデュスタット投与後に血栓性微小血管症(TMA)を発症し、移植腎機能不全に至った1例

【諸言】腎移植後のTMAは免疫抑制剤や拒絶反応による二次性のものが多いとされるが、その他の様々な要因でも発症しうる上に、類似する疾患も多く鑑別は多岐にわたる。そしてTMAを疑った場合には、診断を進めるとともにエンピリックに治療を開始することが肝要である。今回、ダプロデュスタットの投与が契機と考えられたTMAを経験したので報告する。【症例】56歳女性。IgA腎症による末期腎不全に対し、X-9年に父をドナーとした生体腎移植術を施行した。X-4年より血清Cre値が緩徐に上昇傾向を示し、移植腎生検を施行したところ結果はCAAMRであった。X-1年10月より腎性貧血に対しダプロデュスタットの内服を開始し...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s289_2
Main Authors 小山, 一郎, 春口, 和樹, 近藤, 晃, 川瀬, 友則, 蜂須賀, 健, 三宮, 彰仁, 中島, 一朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2022
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.57.Supplement_s289_2

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Summary:【諸言】腎移植後のTMAは免疫抑制剤や拒絶反応による二次性のものが多いとされるが、その他の様々な要因でも発症しうる上に、類似する疾患も多く鑑別は多岐にわたる。そしてTMAを疑った場合には、診断を進めるとともにエンピリックに治療を開始することが肝要である。今回、ダプロデュスタットの投与が契機と考えられたTMAを経験したので報告する。【症例】56歳女性。IgA腎症による末期腎不全に対し、X-9年に父をドナーとした生体腎移植術を施行した。X-4年より血清Cre値が緩徐に上昇傾向を示し、移植腎生検を施行したところ結果はCAAMRであった。X-1年10月より腎性貧血に対しダプロデュスタットの内服を開始したところ、同時期より急激な血圧上昇と、血清Cre値上昇を認め、同薬を中止し降圧薬を投与するも、コントロール不良であった。X年2月に急激な腎機能低下に加え悪性高血圧、貧血、LDH上昇、血小板減少、破砕赤血球像を認め入院となった。加速型-悪性高血圧による二次性TMAを疑い、血圧コントロールに加え血漿交換を施行した。またPJPの予防のため内服していたST合剤による、ダプロデュスタットの代謝経路阻害の可能性を考慮し同薬を中止した。血液透析を継続しつつ腎機能の回復を待ったが離脱は困難であり、透析再導入となった。【考察・結語】本症例は、ダプロデュスタットの代謝障害による高血圧の遷延がTMAを惹起したと推察された。ダプロデュスタットの投与を契機としたTMAの経験はなく、その報告もみられない。貴重な症例を経験したため症例報告する。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.57.Supplement_s289_2