当院リハビリテーション利用患者のサルコペニアに関連する要因の検討

【目的】近年、筋肉量減少によるサルコペニアが注目されている。サルコペニアに関する研究は健常高齢者が対象であることが多く、疾患を有する者、日常生活に介助を要する者を対象とした報告は少ない。また、筋肉量以外の身体機能や栄養状態等の関連を報告したものは少ない。そこで本研究では入院外来患者を対象にサルコペニアを抽出し、その身体機能、身体組成、栄養状態、認知機能、ADLとの関連性について検討した。【方法】対象は65歳以上の当院入院、外来患者31名、平均年齢78.5±6.1歳。測定項目として身体機能評価は握力、膝伸展筋力を測定した。身体組成はInBody770を用いて四肢・体幹骨格筋量、四肢・体幹骨格筋量...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 192
Main Authors 前原, 直樹, 江越, 正次朗, 福島, 康雄, 野中, 賢, 山下, 義己, 藤岡, 康彦, 中島, 裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
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Summary:【目的】近年、筋肉量減少によるサルコペニアが注目されている。サルコペニアに関する研究は健常高齢者が対象であることが多く、疾患を有する者、日常生活に介助を要する者を対象とした報告は少ない。また、筋肉量以外の身体機能や栄養状態等の関連を報告したものは少ない。そこで本研究では入院外来患者を対象にサルコペニアを抽出し、その身体機能、身体組成、栄養状態、認知機能、ADLとの関連性について検討した。【方法】対象は65歳以上の当院入院、外来患者31名、平均年齢78.5±6.1歳。測定項目として身体機能評価は握力、膝伸展筋力を測定した。身体組成はInBody770を用いて四肢・体幹骨格筋量、四肢・体幹骨格筋量割合を測定した。栄養状態評価は簡易栄養状態評価表(MNA-SF)、アルブミン(alb)を測定した。認知機能評価は長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を用いた。ADL評価はBarthel Index(BI)を用いた。その他測定項目は、年齢、性別、BMIとした。サルコぺニアの抽出はAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の基準に従いサルコペニア群、非サルコペニア群に分類した。統計学的解析として、サルコぺニア群と非サルコぺニア群の比較は独立サンプルのMann-whitneyのU検定を用いて分析した。また、サルコぺニア群を従属変数とし、各測定項目を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を実施し、サルコペニアの影響因子を検討した。さらに、抽出された因子からReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線分析によりサルコペニアを検出するカットオフ値を求めた。統計処理はSPSS ver.21.0を使用し、統計学的有意水準は5%とした。【結果】握力、膝伸展筋力、右腕筋肉量割合、左腕筋肉量割合、体幹筋肉量割合、右脚筋肉量割合、左脚筋肉量割合、BIの項目がサルコぺニア群で有意に低値を示した。MNA-SFとalb、HDS-R、年齢、BMIに有意差は認められなかった。サルコペニア群を従属変数とし、四肢・体幹骨格筋量割合を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析の結果、右脚筋肉量割合のみが影響因子として抽出された。また、ROC曲線分析よりサルコペニアを検出する右脚筋肉量割合のカットオフ値は87%(AUC:0.894)であった。【考察】各測定項目を比較した結果、サルコペニア群において身体機能や身体組成、ADLが有意に低下していた。しかし、栄養状態や認知機能には有意差が認められなかった。先行研究においても身体機能やADLがサルコぺニア群において有意に低いことが報告されており、先行研究を追従する結果となった。また、栄養状態や認知機能に有意差が認められなかったことから、入院、外来患者ではサルコペニア疑いであっても必ずしも栄養状態や認知機能が低下しているとは限らないことが分かった。二項ロジスティック回帰分析の結果より右脚筋肉量割合がサルコぺニアの影響因子として抽出され、そのカットオフ値は87%であった。右脚筋肉量割合の87%を一つの目安とすることがサルコペニアの治療指標に繋がる可能性が示唆された。【まとめ】当院のような対象疾患が多く全身状態や身体機能が異なる入院、外来患者を対象としたリハビリテーションを行う上で、右脚筋肉量割合を基準にすることは、サルコペニア治療における一指標となる可能性がある。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は研究の概要を口頭にて説明後、研究内容を理解し、研究参加の同意が得られた場合書面にて自筆署名で同意を得た。その際、参加は任意であり測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと、常時同意を撤回できること、撤回後も何ら不利益を受けないことを説明した。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_192