放射能被災地におけるスタディツアーが 参加者の抱く訪問先への愛着に与える影響 学生を対象とした福島県飯舘村訪問を事例に
東日本大震災及び福島第一原発事故からの農村復興においては, 技術的除染やインフラの物理的再建に留まらず, それらを教訓とし, 被災地域外の人に地域の魅力を伝え, 交流の機会を作り続けていくことが肝要である。本研究では2018 年10~11 月に福島県飯舘村で実施したスタディツアーにおいて, ツアー前後に参加学生44 名に質問紙調査を実施した。印象等を尋ねた自由記述から上位頻出語を抽出し, 語同士の繋がりから記述された主題を理解するため, 共起ネットワーク分析を行った。またリッカート尺度で得られた地域愛着指標に因子分析を適用し, 参加者の3 因子(居住志向, 快適性, 持続願望)に対する得点を求...
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Published in | 復興農学会誌 Vol. 1; no. 1; pp. 14 - 27 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
復興農学会
29.01.2021
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 2758-1160 |
DOI | 10.57341/jras.1.1_14 |
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Summary: | 東日本大震災及び福島第一原発事故からの農村復興においては, 技術的除染やインフラの物理的再建に留まらず, それらを教訓とし, 被災地域外の人に地域の魅力を伝え, 交流の機会を作り続けていくことが肝要である。本研究では2018 年10~11 月に福島県飯舘村で実施したスタディツアーにおいて, ツアー前後に参加学生44 名に質問紙調査を実施した。印象等を尋ねた自由記述から上位頻出語を抽出し, 語同士の繋がりから記述された主題を理解するため, 共起ネットワーク分析を行った。またリッカート尺度で得られた地域愛着指標に因子分析を適用し, 参加者の3 因子(居住志向, 快適性, 持続願望)に対する得点を求めた。また, クラスター分析を用いて各因子得点に基づき参加者を3 つの群(増加群, 不変群, 減少群)に分類し, クラスター間の頻出語の違いを分析した。結果として, 参加者全体ではスタディツアー前後で地域イメージは豊かになり, また地域愛着の増加が見られた。ただし, 参加者群間で地域愛着の変化度合いには違いが見られ, 地域愛着を増加させた群においては, 訪問先の地域のポジティブな要素に目を向けていたことが明らかとなった。以上より, 被災地スタディツアーを行うに際し, 被災地の現状や除染技術の紹介に留まらず各地域のポジティブな要素の伝達を含めることで, 参加者の現地への関心や愛着を高め, 被災地の社会やコミュニティの復興に寄与できると考える。 |
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ISSN: | 2758-1160 |
DOI: | 10.57341/jras.1.1_14 |