左内側膝蓋大腿靭帯再建術・外側支帯解離術後のextension lagに対し、HAL single jointが有効であった一例

【目的】左内側膝蓋大腿靭帯再建術・外側支帯解離術後の後遺症により著明なextension lagが生じ、ロボットスーツHAL単関節タイプ(HAL-SJ)を使用して即時的なextension lag改善に加えて表面筋電図の使用前後変化が認められた症例を経験したので報告する。【方法】筑波大学システム情報工学研究科山海研究室で開発されたロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL)は身体を動かそうとするときに皮膚表面に現れる微小な電位(生体電位)を検出して下肢に障害を持つ方や筋力の低下した方の筋力・歩行機能をサポートする装着型の自立歩行支援ロボットである。今回我々が使用したHAL...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2016; p. 107
Main Authors 森下, 登史, 小谷, 尚也, 福田, 宏幸, 鎌田, 聡, 井上, 亨, 斉田, 和哉, 塩田, 悦仁, 後藤, 恭輔, 喜瀬, 直紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2016.0_107

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Summary:【目的】左内側膝蓋大腿靭帯再建術・外側支帯解離術後の後遺症により著明なextension lagが生じ、ロボットスーツHAL単関節タイプ(HAL-SJ)を使用して即時的なextension lag改善に加えて表面筋電図の使用前後変化が認められた症例を経験したので報告する。【方法】筑波大学システム情報工学研究科山海研究室で開発されたロボットスーツHybrid Assistive Limb(HAL)は身体を動かそうとするときに皮膚表面に現れる微小な電位(生体電位)を検出して下肢に障害を持つ方や筋力の低下した方の筋力・歩行機能をサポートする装着型の自立歩行支援ロボットである。今回我々が使用したHAL-SJは名称のとおり一つの関節のみを介助するものであり、目的筋の生体電位発生状況・強度をモニターにて確認しフィードバック・ネガティブフイードバックすることにより膝・肘関節の目的筋促通・抑制に重点を置いたものである。各電極の貼付部位やHAL-SJ装着方法に関しては「ロボットスーツHAL単関節タイプ(HAL-SJ)取扱い説明書」に記載されている通りに実施した。通常の理学療法のなかで膝関節伸展運動のみ単関節HALを術後7日目に実施した。生体電位を検出する電極添付部位は1セット目(大腿直筋・大腿二頭筋)2セット目(外側広筋・半腱様筋)3セット目(内側広筋・半膜様筋)とした。患者にモニターにて生体電位を確認してもらい1セット20回を3セット実施した。また、HAL-SJ使用前後にて筋電図評価を行い、電極添付部位は内側広筋・大腿直筋・外側広筋・縫工筋・大腿筋膜張筋・半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋に貼付した。【結果】HAL-SJ使用前はextension lag50°であった。単関節HAL初回(術後7日目)でextension lag50°→35°と改善がみられた。実施中に疼痛の訴えはなく「力の入れ方が分かる」「痛くない」といった感想が得られた。また、HAL-SJ使用前後に表面筋電図による評価を行い使用前後の筋電図波形を比較した。筋電図波形が大きくなったものとしては内側広筋・外側広筋。波形が小さくなったものとしては縫工筋が認められた。【考察】現在の主なextension lagの改善を目的とした理学療法においては大腿四頭筋setting・EMS(Electrical Muscle Stimulation)を併用したものが主となっている。しかし、これらは治療課程において大腿四頭筋の収縮の有無・強さを触診や視診により客観的に確認することは可能であるが、患者自身が主観的に筋の収縮・異常収縮を確認すすることは難しいと考えられる。また、本症例においても徒手的な自動介助運動・EMSでは運動感覚をフィードバックすることは困難であり、改善には至らなかった。HAL-SJを使用することで視覚的情報をもとに主観的なフィードバック・ネガティブフィードバックが可能であり、extension lag改善に繋がったのではないかと考える。また、「痛くない」といった感想に関しては、装着者が筋力を発揮するよりも先に関節を駆動させることができるため少ない関節の負担で運動が可能であったためと考えられる。【まとめ】本症例ではHAL-SJを用いた急性期リハビリテーションにより著明なextension lagを即時的・持続的に改善できた。目的筋の生体電位発生状況・強度を確認、フィードバック・ネガティブフィードバックができることにより目的筋の促通・抑制が可能であり、extension lagが改善していく可能性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】ロボットスーツHAL単関節タイプ(HAL-SJ)を用いたリハビリテーションについては、ヘルシンキ宣言に基づき福岡大学病院倫理委員会の承認と患者から書面による同意を得て実施した。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2016.0_107