腎移植8年後に発症した自己腎非外傷性出血に対し、経皮的腎動脈塞栓術を実施した一例

【症例】70歳代、男性【主訴】右側腹部痛【現病歴】X-9年、糖尿病性腎症を原疾患とする末期腎不全のため血液透析療法導入となり、X-8年、妻をドナーに生体腎移植が実施された。その後、虚血性心疾患、心原性脳塞栓のため、アスピリン、ワルファリンを内服中であった。X年1月;自宅で入浴中に右側腹部痛が生じ、嘔吐、眩暈も出現したため当院救急外来を受診された。【経過】単純CTで右自己腎からの出血が見られ、造影CTでは仮性瘤が疑われた。第5病日、経皮的右腎動脈塞栓術を施行し、仮性瘤以外にも複数の微小動脈瘤を認めたため、右腎動脈全体を塞栓した。その後、右自己尿管より軽度の肉眼的血尿がみられたが3週間ほどで消失し...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 55; no. Supplement; p. 365_2
Main Authors 山崎, 郁郎, 添野, 正嗣, 安藤, 哲郎, 有吉, 勇一, 筒井, 貴朗, 久保, 隆史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2020
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.55.Supplement_365_2

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Summary:【症例】70歳代、男性【主訴】右側腹部痛【現病歴】X-9年、糖尿病性腎症を原疾患とする末期腎不全のため血液透析療法導入となり、X-8年、妻をドナーに生体腎移植が実施された。その後、虚血性心疾患、心原性脳塞栓のため、アスピリン、ワルファリンを内服中であった。X年1月;自宅で入浴中に右側腹部痛が生じ、嘔吐、眩暈も出現したため当院救急外来を受診された。【経過】単純CTで右自己腎からの出血が見られ、造影CTでは仮性瘤が疑われた。第5病日、経皮的右腎動脈塞栓術を施行し、仮性瘤以外にも複数の微小動脈瘤を認めたため、右腎動脈全体を塞栓した。その後、右自己尿管より軽度の肉眼的血尿がみられたが3週間ほどで消失した。肺炎が続発したものの経過良好で、第44病日退院となった。【考察】末期腎不全の腎出血は、維持透析例での報告が多く、後天性腎嚢胞と抗凝固療法が要因として挙げられている。本例の自己腎には高度萎縮と小嚢胞があり、腎出血は嚢胞由来の可能性も想定されるが、微小動脈瘤破裂の可能性も残された。腎動脈塞栓術は、将来の腎出血再発リスクの低減に寄与すると期待される。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.55.Supplement_365_2