地域在住高齢者の抑うつ状態と社会的フレイルの関係

【目的】高齢者の抑うつ状態は移動能力や認知機能に関連する。また,抑うつ状態は要介護度や死亡リスクにも悪影響をもたらす。このように,高齢者の抑うつ状態は機能面のみならず臨床転帰にまでも影響することから,抑うつ状態の予防策を考える必要がある。社会的フレイルとは,社会との交流が希薄化することを指し,社会的に心身が脆弱な状態を示す。我々は,この社会的フレイルが抑うつ状態に関係するとの仮説を立てた。そこで本研究の目的は,地域在住高齢者の抑うつ状態と社会的フレイルの関係性を検討することとした。本研究結果は,地域在住高齢者の抑うつ状態を予防する理学療法の一助になると考える。 【方法】対象は,体力測定会の参加...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2024; p. 118
Main Authors 末永, 拓也, 大川, 裕行, 鎌田, 實, 藤村, 諭, 八谷, 瑞紀, 釜崎, 大志郎, 藤原, 和彦, 大田尾, 浩, 吉瀬, 陽, 吉田, 禄彦, 保坂, 公大, 溝上, 泰弘, 井手, 翔太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2024
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2024.0_118_1

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Summary:【目的】高齢者の抑うつ状態は移動能力や認知機能に関連する。また,抑うつ状態は要介護度や死亡リスクにも悪影響をもたらす。このように,高齢者の抑うつ状態は機能面のみならず臨床転帰にまでも影響することから,抑うつ状態の予防策を考える必要がある。社会的フレイルとは,社会との交流が希薄化することを指し,社会的に心身が脆弱な状態を示す。我々は,この社会的フレイルが抑うつ状態に関係するとの仮説を立てた。そこで本研究の目的は,地域在住高齢者の抑うつ状態と社会的フレイルの関係性を検討することとした。本研究結果は,地域在住高齢者の抑うつ状態を予防する理学療法の一助になると考える。 【方法】対象は,体力測定会の参加者とした。除外基準は64歳以下の者,認知機能の低下を認めた者,欠損値を有した者とした。基本情報として,性別と年齢を記録し,身長,体重,body mass index (BMI),skeletal muscle mass Index (SMI)を測定した。抑うつ状態は基本チェックリスト,社会的フレイルはMakizako-5で評価した。その他に,握力,開眼片脚立ち時間,timed up and go test (TUG),歩行速度,five time sit to stand test (FTSST),mini-mental state examination(MMSE)を評価した。統計処理は,抑うつ状態と社会的フレイルの関係を一般化線形モデルで検討した。次に,抑うつ状態の有無別に社会的フレイルを評価するMakizako-5の下位項目をFisherの正確確率検定で比較し,詳細な特徴を検討した。 【結果】分析対象者は,除外基準に該当した5名を除く地域在住高齢者79名 (75±6歳,女性75%)であった。共変量を投入した一般化線形モデルの結果,抑うつ状態にはMakizako-5 (標準化偏回帰係数=0.40,p<.001)が関係することが明らかになった。さらに,抑うつ状態の有無別にMakizako-5の下位項目を比較した結果,「誰かと毎日会話をしている (p=0.030,ES=0.36)」,「友人の家を訪ねている (p=0.013,ES=0.37)」に有意差が認められた。 【考察】本研究の結果,地域在住高齢者の抑うつ状態にはMakizako-5が関係することが明らかになった。抑うつ状態の高齢者は,外出頻度が減り閉じこもり傾向であることが示されている。また,抑うつ状態の高齢者に社会活動を促すことで症状が緩和する可能性が示されている。これらの先行研究から推察すると,高齢者の抑うつ状態と社会的フレイルを評価するMakizako-5の関係性が明らかになった本研究の結果は妥当であろう。興味深いことに抑うつ状態の高齢者は,誰かと毎日会話をしていない者が多く,友人の家を訪ねている者が少ない特徴が明らかになった。これらの項目は,単独では遂行できず他者が関わるという点で共通している。本研究では推測の域を出ないが,高齢者の抑うつを予防するためには,他者と関わる社会活動を促す必要性が示唆された。 【結語】地域在住高齢者の抑うつ状態にはMakizako-5が関係することが明らかになった。抑うつの予防には,他者との会話や友人宅への訪問が必要である可能性が示唆された。 【倫理的配慮】対象者には,研究の内容と目的を説明し,理解を得たうえで同意を求めた。本研究への参加は自由意志であり,参加を拒否した場合でも不利益にならないことを説明した。本研究は西九州大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。
Bibliography:O18-1
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2024.0_118_1