表面電子分光法における信号の減衰は如何に記述されるか? V. 誘電関数を用いた固体における電子の非弾性散乱断面積

Born近似,一般化振動子強度,誘電関数をキーパラメータとして,電子の非弾性散乱断面積について解説する.ボルン近似により,原子における電子の非弾性散乱断面積は振動子強度分布を用いて表すことができる.一方,誘電応答理論では,固体試料の非弾性散乱断面積を極小角散乱領域(すなわち,双極子近似が成り立つ範囲)において,エネルギー損失関数を用いて表すことができる.この2つの式を比較することにより,双極子近似が成り立つ範囲内では,振動子強度分布はエネルギー損失関数で表すことが可能となる.これにより,エネルギー損失関数を用いて,固体中の非弾性散乱断面積を実際的に簡便に計算することが可能になる.さらに,この関...

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Published inJournal of Surface Analysis Vol. 30; no. 1; pp. 2 - 14
Main Author 田沼, 繁夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 表面分析研究会 07.08.2023
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ISSN1341-1756
1347-8400
DOI10.1384/jsa.30.2

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Summary:Born近似,一般化振動子強度,誘電関数をキーパラメータとして,電子の非弾性散乱断面積について解説する.ボルン近似により,原子における電子の非弾性散乱断面積は振動子強度分布を用いて表すことができる.一方,誘電応答理論では,固体試料の非弾性散乱断面積を極小角散乱領域(すなわち,双極子近似が成り立つ範囲)において,エネルギー損失関数を用いて表すことができる.この2つの式を比較することにより,双極子近似が成り立つ範囲内では,振動子強度分布はエネルギー損失関数で表すことが可能となる.これにより,エネルギー損失関数を用いて,固体中の非弾性散乱断面積を実際的に簡便に計算することが可能になる.さらに,この関係から全非弾性散乱の双極子行列要素平方と動的散乱因子を計算することができる.
ISSN:1341-1756
1347-8400
DOI:10.1384/jsa.30.2