当院における脳死分割肝移植の経験
【はじめに】脳死分割肝移植はドナープール拡大を目的に欧米を中心に発展したが、本邦ではこれまでに75例が実施されたのみである。当院で経験した脳死分割肝移植2例を報告する。【症例1】3歳7ヶ月女児。3歳5カ月時に意識障害出現。オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症と診断され、当科紹介。肝移植適応とし、生体ドナー候補者の評価とともに脳死登録を行い、10日目に脳死ドナー発生。成人男性脳死ドナーからの摘出肝臓を臓器提供病院で体外分割した後、移植施設に持ち帰り外側区域を移植した。術後は急性拒絶反応、肝静脈狭窄などの治療を行い、第113病日に退院した。【症例2】8ヶ月男児。兄にOTC欠損症で叔母を...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 55; no. Supplement; p. 342_2 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2020
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.55.Supplement_342_2 |
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Summary: | 【はじめに】脳死分割肝移植はドナープール拡大を目的に欧米を中心に発展したが、本邦ではこれまでに75例が実施されたのみである。当院で経験した脳死分割肝移植2例を報告する。【症例1】3歳7ヶ月女児。3歳5カ月時に意識障害出現。オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症と診断され、当科紹介。肝移植適応とし、生体ドナー候補者の評価とともに脳死登録を行い、10日目に脳死ドナー発生。成人男性脳死ドナーからの摘出肝臓を臓器提供病院で体外分割した後、移植施設に持ち帰り外側区域を移植した。術後は急性拒絶反応、肝静脈狭窄などの治療を行い、第113病日に退院した。【症例2】8ヶ月男児。兄にOTC欠損症で叔母をドナーとする生体肝移植施行歴あり。羊水検査でOTC欠損症と診断。出生直後の高NH3血症発作は回避できたが、肝移植目的に当科紹介。生体ドナー候補者不在のため脳死肝移植登録を行い、10日目に脳死ドナー発生。40歳代男性脳死ドナーからの摘出肝臓を、提供病院で体外分割。外側区域を移植し、再灌流後にS3部分切除を追加した。肝動脈血栓、腹腔内感染、肝静脈狭窄を併発したが、第142病日に退院した。【まとめ】2症例とも合併症治療に難渋した。脳死分割肝移植のガイドライン改訂も検討される中、適応拡大が期待されるが、その実施においては分割肝移植の問題点を理解した上で慎重に適応評価すべきである。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.55.Supplement_342_2 |