小児科領域におけるBiapenem (L-627) の基礎的・臨床的検討
新しい注射用のCarbapenem系抗生物質Biapenem (L627) を小児の細菌感染症に投与し, 臨床分離株に対する抗菌力, 体内動態, 有効性及び安全性について検討したところ, 次のような成績が得られた。 1. 薬剤感受性試験ではL-627投与症例から分離された3菌種20株を対象として, Staphylocmus aums (S.aums) にはL-627とImipcnem (IPM), Ceftazidime (CAZ), Piperacillin (PIPC), Methicillin (DMPPC) の5剤, その他の菌種に対してはDMPPCを除く4薬剤を用いて, 接種菌量10...
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Published in | The Japanese Journal of Antibiotics Vol. 47; no. 12; pp. 1728 - 1752 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
1994
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Summary: | 新しい注射用のCarbapenem系抗生物質Biapenem (L627) を小児の細菌感染症に投与し, 臨床分離株に対する抗菌力, 体内動態, 有効性及び安全性について検討したところ, 次のような成績が得られた。 1. 薬剤感受性試験ではL-627投与症例から分離された3菌種20株を対象として, Staphylocmus aums (S.aums) にはL-627とImipcnem (IPM), Ceftazidime (CAZ), Piperacillin (PIPC), Methicillin (DMPPC) の5剤, その他の菌種に対してはDMPPCを除く4薬剤を用いて, 接種菌量106CFU/mlにおけるMICを測定した。グラム陽性球菌ではS.ameus11株中3株がDMPPC-resistant S.aureusで, L-627のMICは0.78->100μg/mlを示し, その他の8株でのMICは0.10-0.39μg/ml域にあり5株がIPMのMICに類似し, 3株がやや大であった。CАZとPIPCのMICとの比較では1株が同等で, 他の10株では小であった。S. pneumoniae7株に対するL-627のMICはすべての株が≤0.025-0.39μg/m/に分布し, IPMのMICと同じか類似, 他2剤のMICより小であった。グラム陰性桿菌はHaemophilus influenzaeの2株のみで, L-627のMICは0.78μg/mlか3.13μg/mlを呈し, IPMのMICに類似し, CAZとPIPCのMICとでは1株が同じか類似, 1株が大を示した。 2. 小児4例中各2例に本剤6.0, 12.0mg/kgを30分間かけて点滴静注した時のBioassay法による最高血漿中濃度はいずれのCaseも投与終了直後にあり, 6.0mg/kg投与の2例では各々28.8, 24.6μg/ml, 12.0mg/kg投与の2例ではそれぞれ65.4, 39.6μg/mlで, 用量依存性が認められた。β 相の血漿中半減期は前者では各々0.97, 1.20時間, 後者ではそれぞれ0.72, 0.94時間であった。高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法による血漿中濃度はいずれのCaseもBioassay法の濃度に比較しやや低いか低く, β 相における血漿中半減期は12.0mg/kg投与の1例で, Bioassay法に比較し延長がみられた。 3. 血漿中濃度を測定した同一症例におけるBioassay法での投与開始5.5時間までの尿中回収率は6.0mg/kg投与の2例が各々81.4, 75.3%, 12.0mg/kg投与の2例がそれぞれ91.0, 73.8%で, いずれのCaseもHPLC法による回収率より高かった。 4. 本剤の髄液中濃度は化膿性髄膜炎の2例で測定でき, 1, 3, 7, 14病日に30.3mg/kgを30分間かけて点滴静注したCaseでは投与終了各々60, 60, 45, 45分後の濃度はそれぞれ7.60, 1.30, 1.42, 0.38μg/mlと経過と共に低下の傾向を示した。髄液及び血漿に安定化剤を加えずに保存し濃度を測定した1, 3病日を除いての7, 141病日の髄液・血漿比は各々55, 1.2%であった。2, 3, 4, 5, 9, 19病日に25.6mg/kgを30分間かけて点滴静注したCaseでは, 2, 3, 4, 5, 9病日は投与終了60分後, 19病日は投与終了120分後に濃度の測定ができ, それぞれ1.08, 0.62, 0.54, 1.52, 150, 0.80μg/ml, 血漿中濃度が測定できなかった5病日と測定はしたが血漿中濃度が低濃度であった3病日を除いての髄液・血漿比は各々13.3, 4.5, 8.4, 9.6%であった。 5. 臨床効果は14疾患50症例に評価が可能で, 肺炎の20例中2例が無効, 急性副鼻腔炎の1例がやや有効, 皮下膿瘍の3例中2例がやや有効か無効であった以外はすべて有効以上で有効率は90.0%であった。 6. 細菌学的効果は9菌種31株について判定でき, SmmSの12株中2株が不変で, その他の29株93.5%はすべて消失した。 7. 副作用は50例中1例2.0%に軽度の下痢が出現した。 8. 臨床検査値では末梢血の好酸球増多が4例9.5%, 血小板数の増多が3例6.8%, GOTとGPTと同時異常上昇例が2例4.4%にみられ, その中の1例ではγ-GTPでも異常値を示した。 |
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ISSN: | 0368-2781 2186-5477 |
DOI: | 10.11553/antibiotics1968b.47.1728 |